かもじの美術家 ――墓のうえの物語―― [青空文庫]

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  •  古典文学には珍しく、ジェットコースターのようなスピード感にあふれる作品で、しょっぱなから引きこまれました!

     発表当時の19世紀後半、ロシアはドストエフスキーよりトルストイより、レスコーフの時代だったらしい★ その時代に流行るものには、そうさせる理由がきちんと潜んでいる。その誘引力を感じたような気がします。即、面白い。読みながら理解しようとしなくても「アクセスが早い!」という感じでした。

     その、かつての流行作家ニコライ・セミョーノヴィチ・レスコーフの短篇『かもじの美術家』は、「もう?」と思うくらいあっという間に、楽々と軽々と、けれどもめまぐるしく、事が運ばれていきます。

     化粧で人は化ける。魔法のテクニックで、醜い伯爵もジェントルマンに変身✶ テンポよく仕上げていくさまを、コメディ物のように楽しめます。案外、当時の風俗を映し出した大真面目な話なのかもしれない★
     そして、美容師=美術家扱い! メイクやヘアスタイリングがそこまで認められているカルチャーは、羨ましい気もしましたね。しかしながら、職業芸術家は自由がないからこそ、こういうドラマティックな不幸も起き得るのでしょう……。

     ざっくり言うと、舞台女優とメイクアップアーティストの悲恋物語。かもじ君は想いを寄せた女優と手に手をとりあって、獣伯爵のもとから一目散に、決死の逃走劇を図ります。
     ですけど、どこかおかしい★ 悲劇的な結末に向かっていくのに、明るさをかき消せないのです。

     もらい泣きの一つもしなければならないところでしょうか? でもね~、「凄惨な、胸の底までかきむしられるような」お供養シーンも、暗がりで水筒のふたを口でひねるとか、リアルすぎな寝息「ヒューヒュー」とか……、細かすぎる描写の名人芸に、不謹慎ながらも笑いそうになってしまいます。

     喜劇も悲劇も語り口次第ですね。苦労話は軽やかにと学びました。

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