法王の祈祷 [青空文庫]

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  • 『癩病やみの話』に続き読んだシュオッブ作品。訳も同じ上田敏。

    正式の礼拝堂ではない部屋で行われる、ある法王の祈祷。主をたたえ、人民の安寧を高らかに願う祈祷とは趣を異にしており、自分の老いと無知と愚かさと苦悩を告白するような内容でどす黒い。

    教皇の「無知」はソクラテスの「無知の知」みたいに、かなりの知識を積んだ人が謙遜を含んでいうものでもあると理解できるし、実際この作品でも、前半くらいはそういう意味づけなんだけれど、後半、この「無知」がじわりと方向を変えていく。明示されてはいないが、この作品の題材になっている教皇は、少年十字軍への言及があることから、インノケンティウス3世だと思われる。彼らの陥る悲劇に言及し、「無知(イノセンス)」をいうさまは、「知らんがな」感が色濃く出ているように感じる。自分の中のこじつけっぽいとも思いつつ、「まあ、私もインノセンス(ラテン語の仏語読み、英語ではイノセンス)いう名前ですしなあ、ようわかりませんわ」的な言い訳感を大きく感じてしまった。

    まあでも、「ただ捨て置け」と言っているわけではないので、深い苦悩の物語だといえるけれども、若いころには権力闘争で暗殺に関わったり、晩年にはアルビジョア十字軍で異端狩りをしたりと結構あれこれなさっている法王猊下の実績をみると、直接この小説には関係ないとはいえ、なかなか聖性を帯びた話には思えなかったりする。

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