軽蔑された翻訳 [青空文庫]

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  • 青空文庫
  • 新字新仮名
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  • 「正直に云って、日本の学界の水準は西洋の学界の水準よりも低いことを認めねばならぬ」
     
    という時代の話。
     
    「日本人は日本人の書いたものを互にもっと親切に読むようにしたいと思う。我々は互に他の人のものをもっと率直に理解し、もっと親切に批評するようにしなければならぬ。そうしてこそ我々の間に文化の共通な、広い地盤が作られ、その上に初めて我々の独自な文化が花を開くことも出来るのである。然るに我が国の学者は少くとも同国人のものをあまり読まなさ過ぎるのではないか。」
     
    「私は今日学問する人が、先ずもっと我々同志の書いたものに注意すると共に、次に日本語になった飜訳書をもっと利用することを希望せずにはいられない。原書癖にとらわれて飜訳物を軽蔑し、折角相当な飜訳が出ているのに読まないで損をしている学徒も多い」
     
    と、三木師は日本語で論じることを勧めています。

     話は変わって平成時代の英語教育論争の話。
     大学入試にTOEFL導入という話が出てきました。
     ノーベル賞受賞の益川敏英さんは英語が苦手ですが、英語を勉強する時間と労力を専門分野の研究に費やしたということです。
     翻訳書が出て自分の国の言葉で学び・論じることができるのは、その国の文化水準が高いということなんですね。
     
     ところで三木師は『如何に読書すべきか』で、書物を翻訳でなく原書で読むことを勧めています。
      
    『軽蔑された飜訳』初出:「文芸春秋」1931(昭和6)年9月
    『如何に読書すべきか』初出:「学生と読書」1938(昭和13)年12月
      
    “原書原理主義”から“翻訳容認”に変化したというのなら分かりやすいのです。
     肩の力が抜けたとか性格が丸くなったとか日本の翻訳のレベルが上がったとか。
     しかし、“翻訳容認”から“原書原理主義”のコースは何やら不穏なものを感じます。
     日本の翻訳のレベルに失望したとか。日本の中に閉じこもらないで直接世界につながれ、とか。
     一体この7年の間にどのような心境の変化があったのでしょうか。
       http://d.hatena.ne.jp/nazegaku/20170619/p1

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著者プロフィール

明治三十(一八九七)年兵庫県生まれ。京都帝国大学で西田幾多郎、波多野精一、ハイデルベルク大学でリッケルト、マールブルク大学でハイデガーの教えを受ける。大正十五(一九二六)年三高講師を経て、昭和二(一九二七)年法政大学教授。翌年、羽仁五郎と「新興科学の旗のもとに」を発刊、同年の「唯物史観と現代の意識」は社会主義と哲学の結合について知識人に大きな影響を与えた。昭和五(一九三〇)年共産党に資金を提供した容疑で治安維持法違反で検挙、入獄中に教職を失い著作活動に入る。以後マルクス主義から一定の距離を保ち、実在主義と西田哲学への関心を示す。昭和十三(一九三八)年には近衛文麿のブレーンとして結成された昭和研究会に参加、体制内抵抗の道を摸索したが挫折。昭和二〇(一九四五)年三月、再度、治安維持法違反容疑で投獄、九月獄死。未完の遺稿に「親鸞」がある。主著に「パスカルに於ける人間の研究」「歴史哲学」「構想力の論理」(全二巻)「人生論ノート」のほか、「三木清全集」(全二〇巻、岩波書店)がある

「2022年 『三木清 戦間期時事論集 希望と相克』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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