感想・レビュー・書評
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いよいよ、本編最終部。
孔明は6度にわたる北伐を敢行するが、その都度司馬懿と対峙、幾度も追い詰めるものの結局は様々な要因により、ついに魏を攻め滅ぼすことが出来ず、この北伐の間に関羽の子、張飛の子、趙雲ら豪傑を次々に失い、また、心血を注いで育ててきた馬謖を一度きりとはいえ大きな失敗を犯したことから斬り、やがて次第に先細っていく。
物語はここに至り、三国志というよりも孔明の晩年を描くという状態になり、その通り、吉川三国志は孔明の死とともにその幕を閉じる。たしかに、その後の魏、呉、蜀の戦乱の様子を描けば、それはそれで面白いのだろうが、吉川英治はそれをよしとせず、ここで物語を閉じるという、それはそれで潔い。
それにしても、青年劉備がむしろを売っていた時代から展開する物語は、劉備から孔明にバトンタッチされ、孔明の晩年はもはや涙なくしては読めないほどに感情移入してしまう。これが、例えば曹操を主人公にして描く、あるいは孫権を主人公にして描くとまた大きく見方が変わるのだろうと思う。そういう意味で、他の著者による三国志も読んでみたいと思うし、いずれ手に取るだろうなと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示
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