青年よ師を無数に択べ [青空文庫]

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  • 初めて魯山人の書を読んだ。魯山人は陶芸家とばかり思っていたので、講演?のようなものがあり正直ワクワクしながら読んだ。

    美術に限り、師を無数に選べと提言している。特に千年、二千年という昔の美術に着目せよ、という。

    理由は、その当時の人は道理に背くことなく素直に美しいものを造り遺していったからであると。

    僕は美術は分からないが、ビジネスに従事していてビジネスの師匠が三人いる。

    その方々は千年も二千年も昔の人ではなく、僕が二十代後半、三十代前半の時に実際にお会いした方々である。

    千年も二千年も昔の方々ではないのは、僕が直接その方々とお会いして、その仕事ぶりや人柄に触れ、感銘を受け、色々なことを教えて頂いたからである。

    ***************

    一人目の師匠は、アメリカでの仕事のイロハを教えてくれた、当時50代の代理店のアメリカの方である。メールの書き方、電話のかけ方、ミーティングの進め方、人脈の構築の仕方、難しい質問の受け答え方など、見様見真似で一つも漏らさず盗もうと努力した。この方はそんな僕を目にかけて下さり、ビジネスのイロハを惜しみなく注ぎこんで下さった。この師匠から教えて頂いた最大のこと、それは、"○○-san, it's never too late."

    二人目の師匠は、当時お客様であった台湾出身の30代の方である。この方はどんなに難しい打ち合わせでも、瞬時に相手を味方につけ、最後は笑顔で握手で終えるとても素敵な方だ。誠実で知識が豊富、品格があり、かつ知恵も働き、人格者でもある。この方から教えて頂いた最大のこと、それは、"If you cannot open the front door, then use the side door. If the side door is closed, then try the back door. If the back door doesn't work, you still have a chimney. ○○-san, where there's a will there's a way."

    三人目の師匠は、当時間接的なお客様で創業者兼社長をされていた40代の台湾出身の方である。二番目の方が自身の師匠と仰ぐ方で、二番目の方を通じてその方が経営の危機をどう脱したか、どのように社員の士気をあげていったか、業界の常識や限界をどう打ち破って新たなビジネスモデルを築いていったか等、たくさんのお話を伺った。リーダーシップに富み、人を鼓舞する力を持っておられる。毎年末に開催される業界の二千人規模のディナーパーティで講演された際、人を掻き分けて何とか名刺交換し、メールを送ったところ思いがけず返事をいただき、その内容がそれからずっと僕の座右の銘となっている。座右の名:"○○-san, believe in yourself, do your absolute best, and feel good about the outcome."

    ***************

    師匠のいる人生は良い。自分が困難に直面したときに、あの人だったらどのように取り組み、解決するだろうか、と解決に向けてヒントをくださるからだ。

    魯山人が同じ思いで言ったかはわからない。でも、師匠を無数に持て!という魯山人の叫びに大いに賛同し、気分が高揚した読書後であった。

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著者プロフィール

北大路魯山人 (きたおおじ ろさんじん)
料理研究家・陶芸家・書家=本名房次郎。1883(明治16)年、京都・上賀茂神社の社家の次男として生まれる。1904(明治37)年、日本美術展覧会の千字文の書で一等を受賞。その後、篆刻、陶芸に手を染める。19年には古美術商を営むかたわら、会員制の「美食倶楽部」を発足させる。25年には東京麹町に、当時のセレブを対象にした日本料理の料亭、星岡茶寮を創設、顧問兼料理長に就任。26年、北鎌倉の山崎に窯を築き、星岡窯と称した。料理と陶磁器と書に鬼才を発揮、新境地を開いた。美食に人生をかけ、美的生活に耽溺した。1959(昭和34)年12月21日、好物のタニシのジストマによる肝硬変で死去。

「2020年 『魯山人の和食力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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