物のかたちのバラッド [青空文庫]

著者 :
  • 青空文庫
  • 新字新仮名
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感想・レビュー・書評

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  • 片岡義男さんのこの作品は、片岡さん自らのご意思で青空文庫にアップされている。そういうこともできるんだなあ…とダウンロード。

    絵のおそろしく達者な男性と、彼が仕事で出会う女性のお話。今わりと流行っている(と思う)、登場人物リレー形式の連作集…というわけではなく、このフォーマットを基本に、少しずつパターンがずらされた短編を集めた作品集といえると思う。

    片岡作品といえば、80年代に角川映画などでとりあげられ、ものすごく粋な男女とお酒+心地の良い会話という、トレンディードラマのひとつ前の時代を風靡したお洒落都会小説で、内容はどうでもよくて、ただそれを「読んでる」という姿勢だけでトレンディーでいいのだ!と思われているところがあったような気がするんだけど、あらためて開くと、すごく色気があって、しかもかなり生々しくて驚く。オースター作品っぽい、理屈っぽくもみえる表面的な会話を重ねる男女はどちらも、その台詞ほどにはクールではなくて、あっという間にその次の展開に行ってしまいそうな感情や衝動を持っている。そしてそれが、ト書きのような地の文章と、体温の低い台詞によってギリギリで止められているという感じを受ける。いや、どれにも結構エロい雰囲気が漂っていて(賛辞です)、ドキドキしましたわよ、わたくし。絵の上手い男性はやっぱり得だね。ただし、『後悔を同封します』の、アレはいただけないけど(笑)。

    小説家を目指すかたにはよきお手本の一例となるような気もするので、ぜひ読んでいただきたいし、片岡作品を読み直してみようと思うかたには、個人的には絶賛おすすめしたいと思う作品集です。

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著者プロフィール

1939年東京生まれ。早稲田大学在学中にコラムの執筆や翻訳を始める。74年「白い波の荒野へ」で小説家としてデビュー。翌年には「スローなブギにしてくれ」で第2回野性時代新人文学賞受賞。小説、評論、エッセイ、翻訳などの執筆活動のほかに写真家としても活躍している。『10セントの意識革命』『彼のオートバイ、彼女の島』『日本語の外へ』『万年筆インク紙』『珈琲が呼ぶ』『窓の外を見てください』『いつも来る女の人』『言葉の人生』ほか多数の著書がある。

「2022年 『これでいくほかないのよ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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