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感想・レビュー・書評
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円城塔さん一流の言葉遊びの鋭さが生きた一編。鋭すぎて、いつものことながら、何が本質なのか分からなくなる(笑)「確かだ」と思っていたものの存在の「確かさ」が、読み進めるうちに、だんだん危うくなっていく。その解体っぷりが見事過ぎて、癖になる。もしかしたら、「まさかそんなところにいるはずがないという思い込みが盲点で、なにげなくそこいらへんに住んでいた。盲点に住み着く生き物ということかも知れない。向こうとしては隠れていたつもりさえなく、むしろ堂々と生活していた」ものの不思議を、言葉を用いて解き明かそうというのが、彼の作品に共通したテーマのひとつなのかもしれない。もう一つ、私が想像するテーマは「つまりこの世には、全く書かれていない内容をあらすじとして提示する文章というものが存在するのだ。果たして、そんな文章を書く方法は存在するのかというのがここでの設問となる」ことを、自分の作品を介して証明しようとすることだろうか(少なくとも、今並行して読んでいる『これはペンです』(東京:新潮社、2011年)は後者の類に分類されると思う)。円城さんの指摘の鋭さは、純粋な言葉遊びだけにとどまらない。「電源が切られているか、電波の届かない地域にいます。メッセージをお願いします」という留守番電話の文句が、沈みゆく船の中で聞くと仮定したら、「電源どころか命脈を絶たれ、どうやったって電波の届かない国へ向かおうとする者への言葉としては、なかなかに味わい深い文章」になるという。地に足を付けた状態で聞いている時の、留守録の文句の「確かさ」が、ちょっとシチュエーションを変えただけでぐらぐらと揺らぎだす。その手軽な「危うさ」に、心の底からゾッとする。
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新年早々、青空文庫にアップされたのを知り、早速ダウンロードして読んでみた。
円城さんらしい人が、瀬戸内海をフェリーで別府に向かう。別府においては「ぞなもし」を狩るらしい。狩るといっても、ハンティングなのか「紅葉狩り」的にめでるのか、ちょっとはっきりしない。まあとにかく、「ぞなもし」狩りだ。
別府のご当地企画にもとづいた作品なので、目的地はなるほど別府なんだけど、手前の道後温泉に惹かれすぎていて可笑しすぎる。繰り出される『坊っちゃん』あるあるも、読んだ者のツボをついていてこれまた可笑しい。円城作品というより、万城目学作品じゃないかと思うくらい、すっとぼけた軽やかさがキュートである。
もって回った円城展開からの、最後の「どっとはらい」感も、なんだか万城目作品っぽくて笑ってしまった。 -
別府大学で行われた「別府を読む× 別府を書く」と題された特別講演の際して書かれた原稿で、完成版が大分合同新聞に掲載されたとのこと。
テーマは「別府」なはずだが、どっちかというと道後推しでは?と思ってしまう内容。
ただし、別府の観光のしやすさは素直に褒めている。
やはり別府といえば温泉ですよね。
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