ぞなもし狩り [青空文庫]

著者 :
  • 青空文庫
  • 新字新仮名
3.63
  • (1)
  • (3)
  • (4)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 15
感想 : 4
  • 青空文庫 ・電子書籍

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 円城塔さん一流の言葉遊びの鋭さが生きた一編。鋭すぎて、いつものことながら、何が本質なのか分からなくなる(笑)「確かだ」と思っていたものの存在の「確かさ」が、読み進めるうちに、だんだん危うくなっていく。その解体っぷりが見事過ぎて、癖になる。もしかしたら、「まさかそんなところにいるはずがないという思い込みが盲点で、なにげなくそこいらへんに住んでいた。盲点に住み着く生き物ということかも知れない。向こうとしては隠れていたつもりさえなく、むしろ堂々と生活していた」ものの不思議を、言葉を用いて解き明かそうというのが、彼の作品に共通したテーマのひとつなのかもしれない。もう一つ、私が想像するテーマは「つまりこの世には、全く書かれていない内容をあらすじとして提示する文章というものが存在するのだ。果たして、そんな文章を書く方法は存在するのかというのがここでの設問となる」ことを、自分の作品を介して証明しようとすることだろうか(少なくとも、今並行して読んでいる『これはペンです』(東京:新潮社、2011年)は後者の類に分類されると思う)。円城さんの指摘の鋭さは、純粋な言葉遊びだけにとどまらない。「電源が切られているか、電波の届かない地域にいます。メッセージをお願いします」という留守番電話の文句が、沈みゆく船の中で聞くと仮定したら、「電源どころか命脈を絶たれ、どうやったって電波の届かない国へ向かおうとする者への言葉としては、なかなかに味わい深い文章」になるという。地に足を付けた状態で聞いている時の、留守録の文句の「確かさ」が、ちょっとシチュエーションを変えただけでぐらぐらと揺らぎだす。その手軽な「危うさ」に、心の底からゾッとする。

  • 新年早々、青空文庫にアップされたのを知り、早速ダウンロードして読んでみた。

    円城さんらしい人が、瀬戸内海をフェリーで別府に向かう。別府においては「ぞなもし」を狩るらしい。狩るといっても、ハンティングなのか「紅葉狩り」的にめでるのか、ちょっとはっきりしない。まあとにかく、「ぞなもし」狩りだ。

    別府のご当地企画にもとづいた作品なので、目的地はなるほど別府なんだけど、手前の道後温泉に惹かれすぎていて可笑しすぎる。繰り出される『坊っちゃん』あるあるも、読んだ者のツボをついていてこれまた可笑しい。円城作品というより、万城目学作品じゃないかと思うくらい、すっとぼけた軽やかさがキュートである。

    もって回った円城展開からの、最後の「どっとはらい」感も、なんだか万城目作品っぽくて笑ってしまった。

  • 別府大学で行われた「別府を読む× 別府を書く」と題された特別講演の際して書かれた原稿で、完成版が大分合同新聞に掲載されたとのこと。
    テーマは「別府」なはずだが、どっちかというと道後推しでは?と思ってしまう内容。
    ただし、別府の観光のしやすさは素直に褒めている。
    やはり別府といえば温泉ですよね。

全4件中 1 - 4件を表示

著者プロフィール

円城塔
一九七二年北海道生れ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。二〇〇七年「オブ・ザ・ベースボール」で文學界新人賞受賞。一〇年『烏有此譚』で野間文芸新人賞、一一年早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞、一二年『道化師の蝶』で芥川賞、『屍者の帝国』(伊藤計劃との共著)で日本SF大賞特別賞、一七年「文字渦」で川端康成文学賞を受賞した。他の作品に『Self-Reference ENGINE』『これはペンです』『プロローグ』『エピローグ』などがある。

「2020年 『夜ふかしの本棚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

円城塔の作品

ツイートする
×