この作品は作者の貧富と幸不幸のかかわりについての考えを、いくつかの例を挙げながら述べていく作品です。軸となる作者の考えは貧しいことと不幸なこと、富んでいることと幸福なことは必ずしも結び付くことではないというもので、この考えを中心に話が進んでいきます。
作品内で挙げられた例の中で、作者の考えを理解するのに私が一番参考になったのは食べ物の好みの例です。例えば、甘いものが好きな人は多いが嫌いな人もいる、苦いのが嫌いな人は多いが好きな人もいるというようなものです。私自身甘いものが好きなので、嫌いな人がいるということはわかっていても、甘いものはおいしいという考えは昔からあります。貧富についても同じで、人によって何を貧しいとし、何を富んでいるとするのかは違いがあり、また幸不幸についても、何を幸福とし、何を不幸とするのかは違います。考え方や感じ方ひとつで同じものでも意見が180度違ってくるという例は、人間の主観によって判断されることの多い貧富と幸不幸に対する考えを理解する上でとても参考になりました。
貧しいことは不幸であるという強迫観念を多くの人が持っているというようなことも書かれていました。大なり小なり固定観念を持っている私たちにとって、多少貧しいことの想像に違いはあれど、自分にとって不幸に当たることを想像する人が多いと思います。私自身、貧しいことが不幸なことではないと理解したつもりでいましたが、貧しいことを想像したとき自分にとって幸福である想像ができません。おそらくこれも貧しいことは不幸であるという考えを私が根底に持ってしまっていることが関係しているのだと思います。
この作品は私にとって自分の考え方を見直すきっかけになりました。自分が当たり前だと思っていることも、ほかの人の考えによって見方や考え方が変わることがあります。新しい考え方を取り入れるという意味でも、考えを見直すという意味でも何か新しい発見をすることのできる作品だと思います。