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- / ISBN・EAN: 9784062882156
感想・レビュー・書評
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「円谷」プロなのに、もはや円谷一族が経営に関与していない理由・・・これを円谷英二の孫で元社長の著者が赤裸々に語っている本。円谷プロが経営難でバンダイなどに買収されていたのは知っていたが、ここまでひどい状況になっていたことも知らなかった。その惨状とそれに至る経緯は、ノンフィクションとして面白かった。
ただ、著者は、叔父とその息子がワンマン経営したことをその原因としたがっているが、TBSや東宝などに所属する人物については、実名も挙がっておらず、証言などの裏付があるわけでもない。当事者は自分にとって都合のいい解釈しか述べないので、すべてを鵜呑みにするわけにはいかない。著者も、待望を抱いて独立プロを起こし、中国進出をめざしたものの、とん挫すると社員を残してとっとと帰国。批判の対象としている一族の計画性のなさ、行き当たりばったりの性格を受け継いでいる気がしてならない。それに、「ウルトラ兄弟」が出始めたA・タロウ以降の方向性を批判しているが、「ウルトラ兄弟」で胸をときめかせたものとしては、複雑な気持ちがする。「ウルトラマン」・「ウルトラセブン」のシリアス路線だけで「ウルトラシリーズ」がここまで続いたとは、到底思えない。結局、祖父と父の関与したシリーズしか認められない著者が、それとは別の方向性を出したシリーズを毛嫌いしたうえでの愚痴ともとれる。
とはいえ、特撮映画・ドラマ制作の中小企業衰退の顛末は、読み物として本当に面白かった。文章もうまく、一族批判を話半分に聞くとしても、ショービジネスに関心のある人、ウルトラシリーズファンは、一読の価値あると思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
長年、子供たちに夢を与え続けた「円谷プロダクション」。その裏側では大人の事情によって一族間でも内紛が絶えず、映画会社、テレビ局、おもちゃ会社の思惑に振り回され、ついに創業者一族が経営から退場せざるを得なくなりました。本書は、そんな裏事情を生々しく描いたノンフィクションとしても読むことができます。ヒーローの設定が、こんな勝手な事情で決められていたのかと哀しくなりつつも、赤字を積み上げながら良いものを創ろうとした初期の頃の熱気も存分に味わえます。
なぜ、ウルトラマンが泣くことになって、仮面ライダーは復活することができたのか。非常に興味深い内容です。著者は、特撮の神様・円谷英二の孫にあたり、円谷プロダクションの社長も務めた方です。
(書店員・ながい坂の途中)