前々から面白そうと気になっていたけど、結構なボリュームでちょっと尻込みしていた。でも読み始めてみたらボリュームは問題にならないくらい、面白く、切なく、でもとにかく読んでよかったと思う一冊となった。
ゲームが好きな人はもちろん、あまりやったことのない人でも、ゲームの世界の魅力を十分に味わえるし、その制作の過程で生じる葛藤や衝突、成功と挫折、評価と中傷が高解像度で描かれていてそれもこの作品の魅力になっている。
ゲームをきっかけに出会い、作る側となって一躍有名になって、幾度か断絶の危機を経ながらも四半世紀続くサムとセイディの友情は何と名付けられるだろう。二人が抱える孤独や傷、痛みや苦しみが理解を遠ざけ、すれ違いを生むけれど、愛以上のものを互いに抱いている。二人の間にできた溝は愛ゆえにということか。冒頭にあるエミリー・ディキンソンのたった4行の詩が作品全体に投げかける問いは深く、一読ではなかなかクリアできそうにない。
後半で起きた悲劇は辛く、ゲームの世界ではやり直しできても、現実はそうではない。生きている限り刻まれた傷も、重い体も心もすべて引き連れて生きていくしかない。そして死んだ者はリセットボタン一つで生き返ることはない。
たった一度きりのプレイしかできない人生というゲームを続けることは時にとても難しく感じる。それでもときに現実から離れてのめり込める好きなことや、出会えてよかったと思える人がいることは救いになる。ゲームに救われたサムやセイディのように。二人が出会った奇跡のように。
ゲームと人生がこんなに深くつながっていると思わなかった。また時をおいて再読してみたい。
- 感想投稿日 : 2025年1月14日
- 読了日 : 2025年1月13日
- 本棚登録日 : 2024年12月18日
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