心的外傷と回復 〈増補版〉

  • みすず書房 (1999年11月26日発売)
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感想 : 28

著者のハーマン医師と、女性たちの「対話」による、「性暴力」の「体験」を分かち合う・回復する過程を丁寧に記した著。「性暴力」からの「回復」について、きちんと記した書は珍しい存在。だいたいの図書館にあるので、関心のある方にはおすすめです。けっこうなページ数で、「専門書のようだし、最後まで読めるだろうか…」と危惧したが、女性たちの語る事例が、「私の話を聞いて…こんなひどいことがあったの。」と語りかけてくるし、ハーマン医師の説明が「このことをなかったことにしたくない。女性たちに『自分自身』を回復してもらいたい」と語りかけてきて、どんどん引き込まれていった。
女性たちの語る内容は、性暴力に関することなので、読み手にも、つきつけられるものはあります。が、著者はあくまで冷静で抑制された表現を貫いているので、読み手も冷静に読めると思います。

特に心に残ったのは、

後半の、女性たちの自助グループワークで、それぞれの体験を話す場面。

「私にひどいことをしたやつらをこらしめてやりたい」
「いいね!もっと言って」
「あいつのひざをぶっ叩いて立てないようにしてやる」
「いいね!でも、ひざだけでいいの?」
「本当は目玉をくりぬいてやりたいけど、あいつがやった行為がどんなにひどいものだったか、目に焼き付けてやりたいから」

「同じ体験をした仲間」と一緒に、「何を言ってもいい」という安心安全な環境のもとで、「自分のひどい体験」を語り聞いてもらう…これまで孤立していた人たちにとっては、本当に「私に起きた この ひどい体験は、ほんとにあったことなんだ!(過酷な体験を受け入れがたいために記憶がない場合も少なくない)」
きっと、「受け入れてもらえた!」という瞬間だったのでしょう。読んでて心のなかで拍手した。サバイバーの女性たちに向けて。
「ひどい体験を 自分の言葉で 同じ体験をした人に話す、聴いてもらう。共感してもらう。」…そういう段階まで至ると…、自分を責めることが減り、結果として、PTSDなどの症状も改善されてくるそうです。
「なかったこと」には、ならないけれど、「ひどいこと」をした相手に対して、「No!」と、ちゃんと怒ることができた」ことで、無力感ではなく『自分にも力があるんだ』と実感できたのだと思う。「過去のできごと」に対して「抵抗できた」と、「自信」につながるのでしょう。

「性暴力」だけでなく、「戦争帰還兵」「ホロコースト生存者」についても触れられていて、『暴力による支配』の『影響』(PTSDなどを引き起こす)は共通するんだな…。支配し、支配される関係の歪さ・おぞましさを書面で擬似体験できました。擬似体験でも つらかったので、実際の体験者の苦痛はいかほどか…(..)_| ̄|○
だけれども、きちんとした医師や自助グループの、仲間の、助けがあれば、『傷を癒し、回復できるのだ』という実践記録なので、『希望はあるのだ!』と、一筋の光を感じました。ハーマン医師と勇気あるサバイバーたちに大きな拍手と花束を贈りたくなる。ひどい体験からの回復の様を証言してくれて、そして、書いてくれて、ありがとう。
肉体的・精神的な「暴力」や「支配」はどこにでも存在する。一見平和そうな家庭にも。まともそうな会社、学校、コミュニティ…など、人間関係あるところには、だいたい、ある。「善意による支配」「無意識な支配」関係、「パワハラ、セクハラ、モラハラ」…冷静に分析すると思い当たること、多いのでは?だれにとっても。
本書をしっかりと読み、理解し、よくよく検証すると…、そういう、人間関係のトラブルにも、必ず、役立ちます。

ここから余談…自分語りになってしまいますが、中学生時代、 いじめに合い、人間不信になった経験があります。中年の今でも、暴言をぶつけてきた人たちの名前、フルネームで言えますね。そんときの相手の顔も忘れたくても忘れられません。「いじめられるのは、自分が悪いのかな?」と、10~20代は誤解してましたが、今では、ハッキリ言えます。「いじめをしかける方が間違ってるし、理不尽な暴力です。優しい人に八つ当たりしてるだけです」と。
もし、タイムスリップできたら、過去の自分に知恵・戦略を授け、合法的に、正々堂々と、いじめてきた人たちに、ギャフン(古…(^o^;))と言わせてやれるのになー!現実には無理なんで、妄想するしかありません。

ちなみに、2023年2月100分de名著「フェミニズム特集」にて、上間陽子さんが紹介されていた本。上間さんは社会学者で研究を続けながら、沖縄で女性たちのシェルター活動をしている。著書は「裸足で逃げる」「海をあげる」。
Etv特集で上間さんたちの活動のドキュメンタリーを見て、上間さんに注目していた。
「今まで大切にされた経験がなかった若い女の子たちにとって、安心安全な環境を作ってあげたかった」「ほんとうは行政のやる仕事だけど、待っていたら間に合わない」
という上間さんたちの語りに、心をうたれた。そういう上間さんがすすめる本ならば、まちがいない、っておもった、のです。

上間さんたちみたいにはできないかもしれないけれど、本を読んだり、こうやってシェアしたり、日々の生活のなかで、「できる範囲で」行動することで、しんどい思いをしている人の応援はできるかな、っておもいました。自分の小さな世界ですけど。なにもやらず諦めるよりはいいかな、って。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 人間関係
感想投稿日 : 2023年3月14日
読了日 : 2023年3月14日
本棚登録日 : 2023年3月14日

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