幾千の夜、昨日の月

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2011年12月27日発売)
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本棚登録 : 461
感想 : 86
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「夜」だからこその寂寥感、心細さ、物哀しさ…これまで過ごしてきた様々な夜の中にある印象的な記憶。かつての自分が経験した夜にまつわる思い出が、角田さんの描くエピソードに重なるものもあり、ぼやけていた懐かしい過去が甦った。
修学旅行や合宿での、飲み会での、夜を徹した友との語らい。引越し前日の、そして引越し当日の、寂しさと新鮮さがごちゃまぜになった感情を持て余しつつ眠りにつく夜。旅先で夜景を眺め、高揚感に満たされる夜。あるいはすることもなく、途方に暮れながら夜空を仰ぎ、思いにふける夜。不安に苛まれ、自分の輪郭をくっきりと意識する、眠れない夜。ああ、こうやっていくつもの夜を重ねてきたのだなとしみじみと思う。特に若かりし頃過ごしてきた夜に思いを馳せると、恥ずかしいような懐かしいような…甘酸っぱすぎて何だか泣きたくなる。どういうわけだろう、夜になると素直に語れたりする。時にハメを外し過ぎてあれこれイタかったこともあったけども、泣いたり笑ったり、自分にとっては大切な時間だった…克明に思い起こさせてくれるのは角田さんの作品を読んだ時だけだ。
これまでたくさん読んできた角田さんの旅エピソードも、夜をテーマにするとまた印象が変わるものだと改めて思った。それも、笑わせられたり時にしんみりしたり。緩急の付け方がお見事と思いながらも、全体的にしんとした空気感が心地よい、静かでしっとりした、「群青色」のエッセイだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 角田光代
感想投稿日 : 2013年6月23日
読了日 : 2013年6月23日
本棚登録日 : 2013年6月11日

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