逃北~つかれたときは北へ逃げます

著者 :
  • 文藝春秋 (2013年2月22日発売)
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感想 : 25
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「北に逃げたい」という衝動=「逃北」。都会の生活に倦んだとき、北を目指したくなる。北の殺伐とした風景の中に逃げて落ち着きたいという。
「その感覚はわからないので、きちんと説明したほうがいい」と北国出身者の編集さんに言われたとのこと。確かに、「逃北」と聞いて「ふ~ん」と思ってしまった、やはり北国出身者の私。ピンとはこないながらも、能町さんの「逃北」紀行はなかなか面白く、若かりし頃のローカル線青森紀行のエピソードはユニークだった。素朴であったかい地元人の描写とか、観察眼の鋭さよ!そして、私の故郷(岩手沿岸)も訪れていたことが嬉しかった。濃いオバチャン達(まあ、地元的にはフツー)、リアルに再現された方言(笑)さすがっす。章の終わり「…だから私は、どんな顔でこの話題を入れ込めばいいのか本当にわからない。」と震災について触れてきたとき、私も胸が締め付けられる思いだった。能町さん、是非また三鉄乗りに「逃北」して欲しい。
北海道や新潟ときて、まさか海外「グリーンランド」まで行っちまうとは、能町さんの「逃北」もこりゃ本物だとやっと思いました。グリーンランドって、よく考えりゃどんな国か知らないのだった。観光地じゃない故、その紀行レポはとても新鮮だった。この章が一番面白かったな。行きたいかは別として(笑)グリーンランドについてもっと知りたいなと思えた。
能町さんの父母は小樽出身とのことで、自らのルーツ探しとしての「逃北」旅を重ねていくのだが…ルーツを辿っていくと祖母は実は宮城県生まれだったということが判明。祖母の生家を探してみたり、そんなルーツ探し旅も興味深く読みました。「逃北」という名の「故郷探し」。ちょっと羨ましい気もしました。自分は両親も祖父母もまごうかたなき岩手の沿岸南部生まれだからさ~。能町さん的には「北の田舎に生まれ、都会に憧れるところからスタートしたかった」ようだが。お互いないものねだりだぜ。
一見地味だがとても味わい深い一冊です。北国生まれの私だけど、振り返れば実は自分も意外と「逃北」旅してました(盛岡や青森)。能町さんのように、日々の慌ただしさから逃げたくて北を目指したのだった。仙台→盛岡という短距離「逃北」だが、無意識で北を選んでた。南への旅行にもすごく憧れているけど、残念ながら未だ実現せず。私も「逃北」体質か?さびれた北の魅力も捨てがたいものだと今回実感しました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: サブカル・エッセイ
感想投稿日 : 2013年12月25日
読了日 : 2013年12月25日
本棚登録日 : 2013年12月11日

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