武道館

3.46
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本棚登録 : 2010
レビュー : 319
著者 :
メイプルマフィンさん 日本の作家   読み終わった 

朝井リョウが描く芸能界ものということで興味津々で読んだ。アイドルグループNEXT YOUが武道館を目指すサクセスストーリー…簡単に要約すればそうかもしれないが、朝井さんがそんなにわかりやすい物語を描くわけがなく。ライブシーンの臨場感、それぞれのメンバーの細やかな心理描写、どれもがリアルで鳥肌が立った。
人気メンバーの脱退から始まり、これまでとは違う売り出し方に戸惑いながらも少しずつ注目を集め、ステップアップしていくNEXT YOU。実際にあった、アイドルグループを巡る事件を絡めながらの展開なので、時々ぞくっとする。「何者」を読んだときにも感じた、ネット社会の「今」を巧みに落とし込んだ描写がちょっとした悪意をダイレクトに反映させるから、ザワザワ感がハンパない。
ヒロインの愛子はオーディションで入った素人だということもあり、脇の甘さが時々どうなのと思わなくもないが、その普通さに救われることもあり。対して、とことんストイックな最年少のメンバー、るりかは息苦しいなーと感じたが、その高すぎるプロ意識の是非は置いといて、必死な姿勢に多少は共感できた。
読み進めるほどに、この作品を通して朝井さんが何を言いたいかがじわじわと伝わってくる。感じ方は人それぞれだろうけど、読んでいて私はとにかく胸が痛かった。それは幾通りもの痛み。甘さや苦さや儚さ、残酷さ。様々な思惑に翻弄され、そんな中で自分らしさを貫くのはなんて苦しいことだろう。
印象的だったのは、メンバーのセンター・碧のセリフ。
「自分が恥ずかしいって思いながらしたことって、絶対、相手にも伝わるの。あいつ恥ずかしがってる、だから笑ってやろうって」「そんな入り口は、絶対に与えてやらない」
この毅然とした言葉が、深く深く、心に刺さった。
そして、あちこちに張り巡らされた伏線にも、ぎょっとさせられた。後から読み返し、その緻密な仕掛けに驚き。何だか泣けてしまいました、涙腺弱いなぁ。
以前放送していたドラマは1回で挫折してしまったが、この物語の入り口が小説でよかった。活字でこの世界観を味わうことで、アイドルに対する意識が変わった気がする。そして、様々なことが「無料」で享受できてしまう「今」に対しても。改めて、機会があればドラマも見たいと思う。

レビュー投稿日
2016年6月24日
読了日
2016年6月24日
本棚登録日
2016年6月12日
7
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