お家賃ですけど (文春文庫 の 16-5)

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  • 文藝春秋 (2015年8月4日発売)
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感想 : 70
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築40年と年季の入った下宿風のアパート、加寿子荘。ここで過ごした20代の日々。初めは風呂なし部屋に男性として入居したが、いったん離れた後、風呂有部屋に再入居。その時には、見た目が女性に…。
いつもの能町節に慣れてしまっていたので、とりとめのない文章にもぞもぞする。こんな能町さん見ちゃってよいのかしら…みたいな。でも、半ば日記のようなつぶやきのような、若かりし頃の能町さんが見た風景、出会った人、お気に入りの住まいへの思い…エピソードの一つ一つが愛おしい。古い建物につきもののギョッとした出来事もあるけれど、加寿子荘の描写は和みます。当時の写真もまたレトロでいい。アパートの間取りも描かれ、非常用扉?階段もなく、開けたら即外の、どう考えても危険な用途不明の扉とか(笑)。加寿子荘ほどではないものの、かつて私もそれなりに築年数の古いアパートに住んでいたことがあるので、そういう独特の構造が面白いし、不便なようで何気に快適だったりするのだ。家主の加寿子さんもいいキャラで、とってもかわいらしいおばあちゃん。昭和の女性っぽくきっちりしているけれど、能町さんの事情(男→女)に対しても理解を示す度量の広さがまた素敵。
極私的な雰囲気の内容なだけに、人によっては面食らうかもしれない。それで私もなかなか手に取れなかったのだけど、文庫化を機に読むことが出来てよかったなと思う。初期の能町さんの本も読みたくなりました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: サブカル・エッセイ
感想投稿日 : 2015年10月1日
読了日 : 2015年10月1日
本棚登録日 : 2015年9月23日

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