上からの革命: スターリン主義の源流

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  • 岩波書店 (2004年11月9日発売)
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29年末から30年初頭にかけての急速な農業集団化(上からの革命・スターリンが50年代の論文で定義)についての一連の決定をそれ以前の数年にわたる穀物調達危機に対応するための党中央の政策決定過程、党と農民の接点から説明した本。農民との合意関係の維持(結合)を最優先の政策理念とし、まずは小農経営に代わる社会主義的大経営を農民みずからの意志で選択できるための土台を工業が整え、農民が土地整理を行い、大経営を管理するための技術と知識を習得するべきとした古典的マルクス主義とレーニンの意志(「集団化は数世代の事業」)を堅持しようとしたブハーリン派が、穀物調達を優先するために急進的集団化を進めようとしたスターリン派によって凋落していった点を中心に、体制の基礎部分の変動分析をしている(しかしここで、スターリン個人(や、その人格)の影響力を過大評価するソヴィエト史解釈の通弊は、ある意味で‘神話化’であると批判している)。著者はボリシェヴィキが人間の解放は人間的手段によって初めて達成できるという、目的と手段の相互関連について無関心ではなかったことを指摘し、急速な集団化が必要とした農民と党の「結合」解体のための非人間的な手段が、結果として建設の到達点である、秩序の非人間性を規定したとしている。また、この転換時期は本来革命が要請する統治理念が徹底的に試された時期であり、ここで党は、客観的事実とは相容れない歴史の神話化も、その歴史認識に導入したとも指摘している。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: ロシア・政治経済社会
感想投稿日 : 2006年10月23日
本棚登録日 : 2006年10月23日

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