証言「北」ビジネス裏外交-金正日と稲山嘉寛、小泉、金丸をつなぐもの

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  • 講談社 (2008年11月21日発売)
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前半の北朝鮮の地下資源の話だけについて。
本書によると北朝鮮は地下資源が豊富で、鉄鉱石、石炭、金、銀、レアメタルなどが多量に埋蔵されていて(大韓鉱業新興公社=約370兆円、現代経済研究院=約229兆円規模という試算、統一部傘下の南北交流協力支援協会は200種類の鉱物資源が分布し、「世界トップクラスの竜陽マグネサイト鉱山、東アジア最大の検徳亜鉛鉱山への投資が完了すれば、年間3300億ウォンずつ、今後30年間、約10兆ウォン分の鉱山物を生産できる」という。その他井村鉱山の黒鉛鉱石埋蔵量は世界でもトップレベルの625万トンと推定され、モナザイトは推定1000万トン規模の埋蔵量、ウランは400万トン(世界では4000万トン)としている→いずれも韓国の出した数字)、韓国をはじめ、米・英・中・露などすでに目をつけて調査やビジネスに着手しつつある国もあり、北朝鮮自体が「市場経済化」の方向に進んでおり、日本も、近くて輸送費も少なく済む北朝鮮の資源獲得に動くべきだ、そのためには当然国交回復は必要だ、という論旨。

読んでいると北朝鮮からザクザクお宝が出てくるような勢いですが、政治や思惑によって弾力性のある「埋蔵量」が、何事も過大評価しがちな韓国側のデータがほぼ全てというのは厳しい。通常北朝鮮関連のデータは北朝鮮・韓国だけでなく周辺国、関係諸国が出した数字を検討しながら、最もあり得そうな数値を取るもので、もしそれが無理でも、その数字を根拠に自説を展開して本にまでするなら出来る限り裏を取るべきでしょう。

また日本が北朝鮮で資源開発をはじめた際のコストやマイナスのリスクは中学生でも思いつくレベルのことしか書かず、基本的にはうま味を詳細に語るというか、煽るというか激励している。「欧米資本がピョンヤンに続々、営業マンを送り込み、投資先を盛んに物色している」とあるけれど、実例として挙げられているのが4社ほどでそれぞれウェブサイトをざーっと見てみると、オリンド社http://www.orind.com/index.htmはNKとの取引が現実に進んでいるという話は出てなく、DPRKの文字すら少なくともオープンには見つからなかった。アミネックス社http://www.aminex-plc.com/も「04年に北朝鮮と油田・天然ガス開発の合意をした後、状況はかなり混乱しそれに伴い開発計画も速度を緩めている」と言っていて要するに頓挫しているもよう。チョソンファンドのウェブサイトは工事中http://www.chosunfund.com/default.aspxhttp://www.nkeconwatch.com/2007/03/11/the-choson-development-fund/ ←のNKウォッチャーのブログからすると、チョソンファンドは自ら純粋な民間の投資会社とうたっているとのことだけれど、その設立時から常に米国務省と連絡を取っているもよう。またオラスコム・テレコムhttp://www.otelecom.com/は08年初にNKでの通信サービスのライセンスは取得したとあるけれどサービスを開始したという話はない、つまり上記の会社のどれも現実に北朝鮮とフェアにビジネスをして利益を出したという話は出ていない様子。著者は、日本も北朝鮮の鉱物資源開発に本気で取り組んでいた素晴らしい過去として新日鉄を挙げているが調査費用だけかさむだけかさんで、結局何の利益もあげていないし、韓国も北朝鮮開発につぎ込んでいるというけれど、確かにそうだがあれはビジネスというより崩壊防止の保険料と親戚への盆暮れの挨拶みたいなものだから立場が全然違う。

それ以外にも、慎重に読むべき本だと思った。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 北朝鮮・政治経済社会
感想投稿日 : 2008年12月11日
本棚登録日 : 2008年12月11日

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