しっぽ学 (光文社新書)

  • 光文社 (2024年8月20日発売)
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 幼い頃、わたしは、しっぽが欲しかったw
で、母のキツネの襟巻(もちろんフェイクファー)をスカートの後ろにつけて、誇らしげに家の中を歩きまわって、母に叱られたw
 「だって、カワイイじゃない!」と言い訳したけど、あきれられただけだった。

 この本のタイトルを見た瞬間、わたしのしっぽ熱は再燃した。けど、しっぽの可愛さを探究する学問ではなかった(残念)

 著者 東島沙弥佳(とうじま さやか)さんは、京都大学白眉センター特定助教。東島さんの取り組んでいる研究は、「しっぽという一つの研究対象を様々な角度から見てみること」で、その先に「ひと」がどのように「ひと」になったのかを見出そうという研究だそうである。
 例えば、「ひと」の遠い遠い祖先にはしっぽが生えていたが、およそ1800万年の化石を見ると、すでにしっぽを失っていた。その事実などに基づいて、「ひとは、しっぽをどのように失っていったのか」を研究している。

 しかし、日本では「専門は○○学(天文学や生物学など)です。」と言わないと納得してもらいにくいそうで、また、様々な学問(「〇〇学」)の成果をしっぽ学研究のツールにしていることについて、「中途半端」だと批判されることもあるのだと言う。

 だが、東島さんは、しっぽから「ひと」を探るために、人類学や形態学、解剖学を研究し、さらに発生生物学の知見から、「ひと」は胚の段階ではしっぽが生えているのに、発生が進む(胚から胎児になっていく)につれて、完全にしっぽが失われていくことを突き止める。
 そして、発生生物学研究室で研究を進め、胚の段階での体節(たいせつ)と呼ばれる構造が大切であることに気付く。
 また、2024年2月にNature誌に「ヒト科におけるしっぽ喪失の遺伝的な原因」を突き止めたという他の研究者の論文が掲載されたことについて、東島さんは納得していないと言う。

  しっぽ学の道は、かなり先が長いようだ。

 この本には、日本書紀には、しっぽが生えた人間の記述があることも書かれている。東島さんが理系のみならず文系分野にも視点を広げて研究しているのが分かる。

 加えて、京都市内のある中学校で、出前授業をした際に、中学生から出された質問に対する東島さんの答えからも、研究姿勢が伺える。
  中学生 「先生にとって、しっぽとはなんですか?」
  東島さん「しっぽは、私の人生にとって相棒です。」

 さすが! お尻に襟巻をぶら下げて悦に入っていたわたし(みのり)とは比較にならない思い入れである。
 そうなると、わたしとしては、しっぽを巻いて逃げるしかないw

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2025年3月19日
読了日 : 2025年3月19日
本棚登録日 : 2025年3月19日

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