久しぶりのル・グィン。あまり良い読者でない私は「ハイニッシュ」のシリーズも少ししか読んでないので、巻末の解説がとてもありがたかった。惑星ウェレルとイェイオーウェイを舞台にした4本の短編。話は緩くつながっている。奴隷制や女性差別が横行した社会が少しずつ変わっていく中で生きる人々。様々な立場の人間が生きていくうえで味わう苦しみや喜びを、硬質で抑えた文体で表現している。高度な文明社会から派遣された使節と現地の軍人上がりの護衛が、反発しあいながら心を通わす「赦しの日」が特に印象に残った。
遅れた文明社会の表面しか見ていなかった使節が、嫌っていた護衛と共に命の危険にさらされた時に初めて、その社会で生きる人々の生の声を知ることになる。
ル・グィンの作品はいつもとにかく考えさせられるのでなかなか進まないし疲れるが、時にはこういう読書の訓練も必要だなと思う。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
SF
- 感想投稿日 : 2024年6月8日
- 読了日 : 2024年6月3日
- 本棚登録日 : 2024年1月28日
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