私という運命について (角川文庫 し 32-4)

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  • 角川グループパブリッシング (2008年9月25日発売)
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細川連立内閣が成立した1993年。
男女雇用機会均等法の成立で女性総合職のトップバッターとして、大手情報機器メーカーに入社した冬木亜紀は29歳だった。
かつて交際しプロポーズまで受けた相手、佐藤康が、亜紀の後輩と結婚することとなり、亜紀はふたりの結婚式に招待されるも出席を迷っているところから物語は始まる。
 「雪の手紙」29歳、「黄葉の手紙」33歳、「雷鳴の手紙」34歳、「愛する人の声」37歳。そして40歳を迎えての2004年10月23日まで、私たちは亜紀という一人の女性の人生を追っていくことになる。
読みながら、幾度も"運命"という言葉にふれ、幾度もその"運命"とやらに想いを巡らせた。

重い心臓病をもつ沙織
「子供の発達を研究していて私が知ったのは、人間にとって最も大切なのは愛されることだ、という点ですね。愛することが重要なのではなくて、愛されることが重要なんだと思います。だから、人と人との関係は、互いに愛し合う関係ではなくて互いに愛され合う関係でないと駄目なんだっていう気がします」
「例えば、現在の母子関係の様々な問題も、児童心理学的に言うと、母親の子供への愛情が不足したり歪んだりしているからというよりは、母親側が、我が子がどれほど自分を必要とし、愛してくれているかということを掴み取れなくなっているところに最大の原因があるんです。」

(愛してくれる人を愛することと、愛している人に愛されることと、それはどこがどう違うのだろう。)

 (あのとき、康との結婚を選ばなかったことは、私にとっての運命だったのだろうか。
 私は、ただ選ばなかった、選べなかっただけではなかっただろうか。佐知子の言うように選ばなかった未来など何もないのに、何もない未来を何かがある未来と錯覚して、単に自分を自分ではぐらかしただけではなかったろうか。選ばないことを選び、私のほんとうの未来を安易に投げ捨ててしまっただけではないだろうか。)

純平の車に轢かれ怪我をした明日香からの手紙
「冬姉ちゃん、人と人とのあいだには、きっと取り返しのつかないことばかり起きるけれど、それを取り返そうとするのは無理なのだから、取り返そうなんてしない方がいいんだと私は思います。大切なのは、その悲しい出来事を乗り越えて、そんな出来事なんかよりもっともっと大きな運命みたいなものを受け入れることなんだと思います。」

【人生は自分自身の意志で切り開く】
【運命という存在に身を任せ、あるがままを受け入れていく】
この二つは矛盾なく両立するのだろうか。
康と別れてしまった折に佐知子から綴られてきた手紙にある言葉を、気づけば私も亜紀のようにくりかえし読み返していた。

《選べなかった未来、選ばなかった未来はどこにもない。未来など何一つ決まってはいない。だからこそ、一つ一つの選択が運命なのだ。私たちは、運命を紡ぎながら生きていく》

それにしても、女性の10年間にはこれだけのことが起きる。私は今年28歳。まだこの物語のスタートラインにも立っていない。これからの未来は、きっとまだ決まっていない。決まってなどいないのだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(国内)
感想投稿日 : 2020年1月7日
読了日 : 2020年1月7日
本棚登録日 : 2020年1月7日

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