ボトルネック (新潮文庫)

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本棚登録 : 9010
レビュー : 1209
著者 :
つづきさん 小説(国内)   読み終わった 

亡くなった恋人を追悼するはずが、自身も同じ断崖から墜落……目が覚めると、そこは彼が『生まれなかった』金沢の町だった。
パラレルワールドと言ったら聞こえは良いですが、その世界のなんと残酷なことか。

亡くなった恋人は生存している、仮面夫婦のはずの両親は仲良し、食堂のお爺さんも一命を取り留めている。
なぜ二つの世界での事実がこうも違うのか、リョウの世界では『生まれなかった』姉・サキと話して気づいたことはその分岐点でした。
リョウとサキ、それぞれの選択と行動によって導かれたのが、その結果なのです。
端的に言うとすれば、リョウは生まれない方が良かったということ。
リョウが生まれない方が、みんなが幸せになれたということ。

読了直後は「なんだこのネガティブ自己陶酔野郎は」とか思っていたのですが……、レビューを書こうと思い返しているうちに、なんとも苦々しい気持ちになりました。
つまり、リョウの心情、これそのものが"若さ"なんですよね。
漠然とした不安の中で、自分の存在意義を思い悩んでしまう、リョウのその胸中が手に取るように分かります。
なぜなら、私もそうだったから。
今になって思えば小っ恥ずかしく、「何をそんなくだらないことを」と一笑に付してしまえるのですが、多感なその頃には一大問題なんです。

そして、その若さゆえの苦悩を、バッサリと切り捨てているのが本作。えぐいな~
お前なんか生まれない方が良かったんだぞ、と。とんでもない鬼の所業です。
どちらともとれるラストが秀逸。
痛々しさ全盛期だった頃の私がこれを読んでたらどう思ったか、なんて感慨に耽ってしまいます。

文章や構成には多少お粗末なところもありましたが、私には後からじわじわくる良作でした。
この痛々しさ、思い当たるところがある人にはぜひ読んでもらいたいです。

レビュー投稿日
2015年4月6日
読了日
2015年4月3日
本棚登録日
2015年4月3日
3
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