育てられない母親たち (祥伝社新書)

  • 祥伝社 (2020年2月1日発売)
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感想 : 34
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たとえば、シングルマザーの彼氏が子どもを虐待して死なせたという事件は多い。
そのとき世の中は、一様にその事件を非常に分かりやすい構図で捉えようとする。子供のまま親になりきれない女が、ろぐてもない凶暴な男に入れ込んで我が子を犠牲したのだと。シンプルな構図で彼らを糾弾する。
でも私はそういった事件を見聞きするたび、「どうしてこのような事件が起きたのか」、「どうしてこのような人間ができあがったのか」と考えてしまう。背後に潜む過去について。

本書は、まさにそこに着眼点を置き、彼女たちの長い人生の中で色んな問題が雪だるま式に膨れ上がり、やがて虐待事件が起きてしまうまでを追ったノンフィクションだ。
子どもを育てられない母親のほとんどが、かつては親から育児放棄され暴力を振るわれ虐待されて生き延びた子ども自身だった。

救いがどこにもない負の連鎖に読んでいて苦しかった。
だからこそ、その中でとある風俗嬢がした発言には強く胸を打たれた。

「私がこんなふうになったのは、お母さんのせいだと思っています。だからこそ、絶対にお母さんみたいにはなりたくない。最悪ですよ、自分の子供に平気で『産まなきゃ良かった』とか『死ね』とかいう親は。私がそうだったように、そんな親の元で育ったところで不幸にしかならないんです。
 そういう意味では、息子がまだちっちゃい時に手放せたのはよかったんじゃないですかね。医者とかスポーツ選手とか立派な人に育ててもらえたら、幸せになれるんじゃないでしょうか。私ができるのは、自分と同じような人間をつくらないことだと思っています」

親になれない人間というのはいる。きっとそれはどうしようもなく変えられないことだと痛感した。
でもそこに新たな命が産まれたときにできることはまだある。子どもを育てる意志のある、親になりたい人間に託すことだ。
石井光太さんの著作で何度もBabyぽけっとというNPO団体を目にするが、そのたびに希望を感じる。もっと認知されてほしい。活動を応援していきたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新書
感想投稿日 : 2020年3月22日
読了日 : 2020年3月21日
本棚登録日 : 2020年3月21日

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