太陽の季節 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1957年8月7日発売)
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友情と言うことにせよ、彼等は仲間同士で大層仲は良かったが、それは決して昔の高等学校の生徒たちに見られたあのお人好しの友情とはおよそかけ離れたものなのだ。彼等の示す友情はいかなる場合にも自分の犠牲を伴うことはなかった。その下には必ず、きっちり計算された貸借対照表がある筈だ。何時までたっても赤字の欄しか埋まらぬ仲間はやがては捨てられて行く。彼等の言動の裏には必ず、こうした冷徹で何気ない計算があった。
<33頁>

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著者のビッグマウスたるルーツを知ろうと読んでみました。
内容としては暴力とセックス。
当時、太陽族という語まで生んだほど社会現象を起こしたらしい。

正直、最初は、「暴力とセックス」にばかり意識が向いてしまって、女性としては多少不愉快な内容もあるので、面白くないという印象でした。
けれど、ここでレビューを書くにあたって、他の方の引用を読んで、その部分を再読してみると、なんだか不思議とすとんと落ちたかもしれない。

「暴力とセックス」はただの表層であって、子どもから大人への、または大人になってもなお抱える自分自身のもつ理想と現実のギャップへの葛藤とか、鬱屈した感情を、叩きつけているような印象を抱きました。

石原氏自身も若い頃があったのだなぁと(当然ですが)、なんだか不思議な気分になりました(笑)

ただ、石原氏が先日、「面白くないからやめる」と言って話題になりましたが、それは石原氏がこういう鬱憤を乗り越えた「オトナ」になって、共感しにくくなってしまったから、「面白ない」と感じるのでは?と思ってしまいました。
つまり、最近の受賞者の質が落ちたとか、面白くないのではなく、ただ単に石原氏自身が、最近の受賞者世代の書かれる「感情」やら「環境」やらに共感できないからではないかと。

そう思った所以を抜粋してみます。

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人々が彼等を非難する土台となす大人たちのモラルこそ、実は彼等が激しく嫌悪し、無意識に壊そうとしているものなのだ。彼等は徳と言うものの味気なさと退屈さをいやと言うほど知っている。大人達が拡げたと思った世界は、実際には逆に狭められているのだ。彼等はもっと開けっ拡げた生々しい世界を要求する。一体、人間の生のままの感情を、いちいち物に見たてて測るやり方を誰が最初にやりだしたのだ。
<34頁>

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大人たちのモラル
(=最近の若者は貧弱だから皆自衛隊に入って訓練しろと言う、若者が貧弱であるという論理の根拠って結局、勝手な価値観とかモラルだよね)

大人達が拡げたと思った世界
(=今の日本の経済的豊かさとか?)

石原氏が若かりし頃の「戦い方」と、今の若者の「戦い方」が違っているだけで、根本みたいなものは一緒だと思う。「日本はすき。すばらしい国だと思う。でも、日本が徴兵制になったら、いやだな。戦争になったら海外逃亡しよう」って思う。それは貧弱だからとかじゃない。時代の流れによるもので、ただその若者たちの感情を石原氏が理解できなくなっただけ。でも、それは石原氏だからとかではなく、当たり前のこと。それが世代の違いってやつで、それが時間の流れの中では自然なことだと思った一冊でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(日本)
感想投稿日 : 2012年2月27日
読了日 : -
本棚登録日 : 2012年2月27日

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