海辺のカフカ (上) (新潮文庫)

3.65
  • (2333)
  • (3040)
  • (4822)
  • (481)
  • (116)
本棚登録 : 26084
レビュー : 2018
著者 :
14kuro10circleさん LA文法学■日本語・日本文学・村上春樹   読み終わった 

下巻の途中まで読んで挫折した、私にとってはある種いわくつき。
しかし今回は大いに楽しんで読み終えることができました。しかも、もしかしたらベストオブ村上春樹は本作に更新されたかもしれません。

物語は15歳の田村少年の家出、戦時中に起こったお椀山での集団失神事件、猫と話ができる初老の男ナカタさんの日常という一見関連性のない三つの話が交錯するかたちで始まります。

ストーリー展開として、下巻の中盤から田村少年とナカタさんの話がいよいよクロスし始める、収束するポイントに向かって物語が加速し始める箇所に出会うときが村上作品において毎回ワクワクする瞬間。
そして結末に至るまでの緩急は大島さんが運転するマツダロードスターよろしくスムーズで、終話の余韻も素敵でした。
考えさせられるたくさんの対話とストーリー展開、出てくる人物が個性的で全員好きになれたというのがベストオブ村上春樹の更新につながったのかもしれません

心に残ったのは、いろいろな対話。
なかでも大島さんと田村少年の対話。特に、施設の調査員に対する反論から始まる16ページにわたる大島さんの主張がいちばん印象的でした。
想像力の欠如と、それによる自分が掲げた主義主張を他人に無理強いする心の狭さ、不寛容さに関する意見はかなり考えさせらるものでした。

一つだけ残念だったのは、三度目に出てくるジョニーウォーカーにそれまでのようなおぞましさや満ち満ちた狂気を全く感じなかったこと。どう表現すればいいのか、村上春樹も分からなかったんじゃないかと変な憶測をしてしまうほどです。

本作を読み終えてやりたいと思ったことが二つあります。
早いうちから村上作品に触れてもらいたい、また主人公と同い年のときに読んでもらいたいと思ったので、我が子の15歳の誕生日に贈ること。
そして、話に出てくる山小屋のような「ちょっとキャビンに行ってくる」と言えるセカンドプレイスが欲しくなりました。

次回読む際は田村少年のパートだけを通して読もうと思います。そうすれば世界でいちばんタフな15歳の定点観測になり、この物語の違った捉え方ができる気がします。

レビュー投稿日
2019年5月1日
読了日
2019年4月29日
本棚登録日
2019年3月29日
1
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『海辺のカフカ (上) (新潮文庫)』のレビューをもっとみる

『海辺のカフカ (上) (新潮文庫)』のレビューへのコメント

まだコメントはありません。

コメントをする場合は、ログインしてください。

いいね!してくれた人

ツイートする