俳句とあそぶ法 (朝日文庫 え 1-2)

著者 :
  • 朝日新聞出版 (1987年1月1日発売)
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感想 : 3
5

この本、田舎ののどかな風景を描いた安野光雅の表紙の単行本(1984年刊行)のときから繰り返し読んだものでした。すっかり忘れていましたが、まさかの不義理・恩知らずの弟子ですが、そうです、私の俳句の押しかけ直伝のお師匠さんは江國滋だったのでした。

もやもやとしていた幾枚もの断片的なイメージが、いきなり鮮明な映像の重なる連続となって、突然つぎからつぎへと脳裏に浮かび上がってきました。

いまでは、娘で2004年に彼の死後7年後に直木三十五賞も得た、その作品の多くが映画化されている江國香織の方がはるかに有名になってしまいましたが、私にとっては江國といえば滋、俳句について、手とり足とり酸いも甘いも全身全霊をかけて教わったのが彼でした。

ながらくあまり振り返りもしませんでしたが、私の俳句は、中学生のころ、教科書から抜け出た水原秋桜子や山口誓子や高浜虚子らによってたかって形作られ、そのうち正岡子規と寺山修司に強引にアクロバティックに引っ張られて、やがて自らに一日50句作ることを課したり、おじさん達に対抗して(?)、鰻と俳句のどちらが目的かわからない「京都うなぎ句会」なる女三人の句会などをかしましく開催したりと、そのころ若者にあるまじき行動を起こしていたのでした。

そして、うっかり忘れてしまっていましたが、そのとき、頭の先からつま先まで、どっぷり(たっぷり)浸かっていたのが江國滋の俳句にちなんだ著作でした。

この本のあと『旅はプリズム』『江國滋 俳句館』『スペイン絵日記』『旅ゆけば俳句』『きまぐれ歳時記』『伯林感傷旅行』『微苦笑俳句コレクション』『慶弔俳句日録』『英国こんなとき旅日記』『スイス吟行』『イタリアよいとこ』、そして絶筆『癌め』と『おい癌め酌みかはさうぜ秋の酒 江國滋闘病日記』と、俳句に関しては、歳時記以外は江國滋の著作しか読まなかったといっても過言ではありませんでした。

いまから思えば、ざっと目次を見るだけでも、その俳句にかける情熱というか、どうすればズブの素人でも究極の俳句をたしなむ人になれるか、を手際よく実践的に教えようとしたかがよくわかる、目配りの利いた優れたすばらしい本です。

◆目次◆
1 俳句を、どうぞ
2 自然恐怖症候群
3 定型のいのち
4 よくぞ日本に―季語(1)
5 動不動―季語(2)
6 禁忌は禁忌―季語(3)
7 切れ字は宝
8 前書きの効用
9 つかずはなれず―挨拶句(1)
10 人の悼み方―挨拶句(2)
11 辞世便覧―挨拶句(3)
12 もっけの病気―病中吟
13 寿ぎの天敵―慶祝句
14 壁に耳あり―旅行吟
15 わたしのノウハウ
16 字づらの研究
17 ふりがなを考える
18 擬声語について
19 俳号のつけ方
20 芭蕉になってみる―句風の確立
付 句会白書

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 韻文(俳句・和歌)
感想投稿日 : 2012年2月19日
読了日 : 2012年2月19日
本棚登録日 : 2012年2月19日

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