中学生になったピーター、アーサー、デイビドの3人は、歴史の先生から未発見の古代ローマ軍ののろし台が近隣にあるはずで、ぜひ探してほしいと依頼を受ける。
古代ローマ軍ののろし台なんて、ローズマリ・サトクリフの「ともしびをかかげて」を思い出させて、わくわくする。
なのに、歴史に興味のない3人はそれを聞き流すのだけど、この一件が最初から最後までこの作品を貫いている。
今回ピーターは平底船を改造して、自転車動力の(漕ぐのはもちろん体力自慢のアーサー)外輪船(もどき)を作る。
夏休み、この船に乗って冒険の旅に出るのだ。ご近所に、だけど。
アーサーがクリケットの試合を通して仲良くなったヒューは、近くに住む大地主の敷地の片隅に建つ小屋に住んでいる。
館の周辺はもちろんきれいに手入れをされているが、貧しい人たちが住む一帯は汚水の処理が適切ではなく、不衛生な環境で病人も出る始末。
だけど尊大な地主のブリッジボルトン夫人は周囲の様子を見ようともせず、環境改善はする必要がないと断じる。
この3つの大きな柱に、クリケットの試合や、モーターボートとのいざこざなどを交えて、最後は大団円。
これ、どこが素晴らしいかというと、彼らに歴史に触れさせつつ、より良い未来を生きるために何をすればいいのか(精神的なことも、環境的なことも)を考えさせていること。
これから大人になっていく彼らに、この夏の出来事は大きな意味を持ったはず。
そのうえでの冒険の面白さ。
少年たちの手作りの船なので、簡単にすぐ壊れる。
そうしたら、次はどうしたらいいのか工夫して改良していく。
そしてそれを上回る試練。
ほんとうに、ご近所の冒険というのに、死んでもおかしくないような体験。
私が親だったら、心配で絶対に許さないような気がするけど、少年はこうやって一人前の大人になっていくんだなあと思った。
とにかく面白いに尽きる一冊。
- 感想投稿日 : 2019年3月23日
- 読了日 : 2019年3月23日
- 本棚登録日 : 2019年3月23日
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