だいたい高校生を想定して書いた本とのことですから、難しい言葉は使っていません。
でも、読むのに少し時間がかかりました。
高校生に向かって語りながら、やはり私たち大人にも伝えたいことがあるはずです。
高校生に考えろ、行動しろというのなら、私たち大人だって考えたり行動したりしなければいけません。
そんなことを考えながら、読みました。
“福沢諭吉は、人間とはどういうものか、ということをよく知っている人でした。そして、人間の素質の中で、ただ悪いだけで、よいところは何もないのが、「怨望」だ、といっています。たとえば、乱暴な素質の人には―福沢は、粗暴と呼んでいますが―、勇敢な、という良い素質がある。軽薄な人には、利口なところがあるといってもいい―福沢の言葉では、怜悧―というのです。
しかし、怨望という素質だけは、―人をうらやむ、人に嫉妬する、ということですが―良い素質とつながっていない。何か良いものを生みだすところがまったくない、といいます。”
この、怨望から大人のやることが、子どものやってしまう意地悪に近い。
人に意地悪を言ったりしたりするのは、非生産的な行為であることを思い、自分はしない、されても気にしない、そういう原則を自分のなかに持とう、と。
ウソをつかない人になるために、自分に対して「誇り」を持て。
ウソをついても誰にもわからないかもしれない、そんな時でも、自分は知っているのだから。
自分に対して恥ずかしくない生き方をすること。
平気でうそをつくひとには投票しないこと。
そう、後半はどんどん、日本という国に、地域に、社会に生きる人としてもあり方について述べています。
“私たちの本当の知恵は、自分の目で見ること―本を読むことも、そこに入れましょう―、自分の耳で聞くことをよく受けとめ、自分のものとして活用することができるようになって、生まれるのです。”
自分の考えをまとめるためには、文章を書くことが大事。
よい文章を書くには、句読点の位置をよく考えること。
第二次世界大戦で原爆が落とされたことは、絶対に間違った行為であった。
その反省に立って、世界中で核兵器を減らす粘り強い努力があった。
ところが9.11以降、世界は再び核兵器をいつでも使える武器として準備しはじめている。
それが「古い人」の世界の現状。
“敵意を滅ぼし、和解を達成する「新しい人」になってください。「新しい人」をめざしてください。
「新しい人」になるしかないのです。”
読んでいて、平和を希求する強い気持ちを感じました。
2003年に書かれた本。
今ならどんな言葉で若い人に語りかけるのでしょう。
夏目漱石、『カラマーゾフの兄弟』『デイヴィッド・コパーフィールド』などを若い人に紹介していますが、私も読みたいと思います。
- 感想投稿日 : 2015年6月14日
- 読了日 : 2015年6月14日
- 本棚登録日 : 2015年6月14日
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