東北から北海道に開拓に来た割と近いご先祖様を持つ私には面白かったけど、北海道や東北になじみのない人に、この作品は伝わるのだろうか。
純粋で公平で民主的なエミシと、階級社会の中で一部の人たちの贅沢な暮らしのために虐げられるウェイサンペ(大和朝廷時代の日本人)。
勝者の書く歴史が全くの事実とは限らないように、敗者の書く歴史が本当の真実とも限らない。
こんなに単純に善悪が分かれるわけがないことは子どもにもわかる。
それでもどうしても書きたいことがこの作品の中にあるのだろう。
多分それはエミシ対ウェイサンペの戦いであり、エミシの生活や風俗だと思うんだけど、それだけでは読者が付かないと思ったのか、マサリキンとチキランケという若い二人の引き裂かれた純愛を持って来たものだから、どうも軸がブレブレになってしまっている。
戦闘シーンにはテンポがないため手に汗を握れないし、時間の経過がわかりにくい。
そもそもマサリキンが世間知らずで純粋すぎて、なかなかチキランケを助けることができないし、エミシの戦いに参加して大きな戦果を挙げても、どうも英雄というには決定的な何かが足りない。
いっそのこと視点をチキランケにして、ひたすらにマサリキンを恋求める乙女から見た戦いの虚しさとエミシの心満たされる生活の対比を描くとか、何なら戦いの中で炊き出しや負傷者の看病をしながら愛する人のそばにいることを選択するカリパのような少女と交互に描くとかにすればいいのにと思った。
全体的にまんべんなく書こうとするから、テーマが散漫になっている気がした。
上巻の時から気になっていたのだけど、このエミシは、なぜアイヌの風習で描かれているのか。
確かに東北にはアイヌ語由来の地名が結構あるけれど、私の考えるエミシは、アイヌとは別物なんだけどなあ。
テーマは面白かった。
文章・構成はもう少し。
- 感想投稿日 : 2019年2月19日
- 読了日 : 2019年2月19日
- 本棚登録日 : 2019年2月19日
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