たそがれ清兵衛 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2006年7月15日発売)
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目次
・たそがれ清兵衛
・うらなり与右衛門
・ごますり甚内
・ど忘れ万六
・だんまり弥助
・かが泣き半平
・日和見与次郎
・祝い人助八

普段はぼんくら扱いされていても、ここぞという時に使う剣。
どれも読後感がいい。

特に面白かったのが、「ど忘れ万六」
年のせいかど忘れがひどくなり、仕事に支障をきたすようになってしまったため、家禄を息子に譲って隠居した万六。
貧乏侍の家にとって、隠居というのはただ飯喰らいと同一語。
家族に冷たくあしらわれている毎日だ。
だけど、嫁のピンチとなれば立ち上がる万六。

“万六はゆっくり後じさってから、わざと大場に見えるように、眼にもとまらぬ手つきで刀を鞘にもどした。それから背をむけて歩き出した。ゆっくりゆっくり歩いているのは、さっき居合を使ったときに、またしても腰を痛めたのである。”

嫁の感謝もひと月しか続かないけど、毎日うまいご飯を作ってくれるならそれでいいか、と万六は思うのである。

「ごますり甚内」のごますりは、出世のためのものではない。
武士にあるまじきごますりを行うのは、武士としての体面のためなのである。

江戸時代の侍というのは、まさしく現代のサラリーマン。
耐えがたきを耐え、忍びがたき忍べるのは、見ていてくれる人、分かってくれている人がいるから。
ぼんくら扱いされたって、卑屈になる必要なんてない。
ひょうひょうと生きる彼らの姿に、自分もそうでありたいと思いながら読んだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年11月19日
読了日 : 2017年11月19日
本棚登録日 : 2017年11月19日

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