“科学と詩は隣同士にあると湯川博士が言うのなら、純文学とSFも隣同士にあるのかもしれない。”
これは去年の夏にスティーヴ・エリクソンの「Xのアーチ」を読んだときの私の感想。
ちなみに湯川博士というのは湯川秀樹のことで、ガリレオのほうではありません。
これは純文学なんだよね。
SFですと言ってくれたら話は早いのに。
で、「Xのアーチ」を読んだときに、こういう構造の小説は日本の純文学にはないね、なんて書いていましたが、すみません、村上春樹が書いていたんですね。
そうか、だからノーベル賞候補なのか。
という発見はさておき、やっぱり読んでいてむずむずする村上春樹。
村上春樹の圧がすごい。
清潔でタフでストイックな登場人物。
サラダとサンドイッチかパスタが主な食事。
間違っても豚汁とおにぎりなんて食べない。(と言い切れるほど読んでないけど)
どの小説を読んでも(というほど読んでないけど)、おんなじような登場人物で、それはただの記号のよう。
ティーンエイジャーも中年男も、同じようなものを食べ、同じ音楽を聴き、同じような話かたをする。
だから、どの部分を切り取っても、そこにはムラカミ印が刻印されていて、ものすごく息苦しい。
ああ、世界中のハルキストの皆さんごめんなさい。
そして中盤にこれでもかと出てくる性描写も好きではない。
情念も汗も感じさせない、乾いた性描写なんて読んでいてもそそられない。
ただし、それ以外は面白いの。
徐々に近づいてくる青豆と天吾。
マザのいないドウタは一体どうなったのか。
ふかえりは本当にマザなの?もしかしてドウタの方では?
天吾の母の秘密。
リトル・ピープルの正体と目的。
ああ、村上春樹の文じゃなくて読みたい。
村上春樹はエッセイだけでいいや。
そんなことを思ってしまうくらい中盤を読み続けるのが辛かったのです。
- 感想投稿日 : 2016年10月26日
- 読了日 : 2016年10月26日
- 本棚登録日 : 2016年10月26日
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