天の歌―小説都はるみ (中公文庫 な 29-1)

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  • 中央公論新社 (1992年12月1日発売)
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都はるみに詳しいわけではないから、どこが伝記でどこが小説なのかはわからない。
けれど一旦歌に、音楽に憑りつかれた人は、普通の生活をおくることはできないのだなあと思った。
音楽に憑りつかれたのは都はるみというよりも、彼女の母。

小説というよりも演歌の熱を感じるような文体で書かれる、今なら虐待と言われてしまうくらい激しい感情を春美にぶつける母。
京都の西陣で機織りをしながらはるみとその弟妹、5人の子どもを育てる。夫は遊び人。
こんなはずではなかった。いっそ家族を捨てて旅回りの浪曲師にでもなろうか。
そう思いながら、その想いを春美にぶつけながら母は、子どもたちに歌(浪曲とか歌謡曲)を教える。

都はるみを作ったのはもちろん本人の努力だろう。
しかし、春美と母、母と父。
愛情と憎悪が交錯する家庭で一家団らんも知らない少女は、歌を歌うことしかできなかった。
歌を好きなのか、本当は嫌いなのかもわからないまま。

都はるみは一度歌手を引退している。
小説はそこで終わっているが、実際は数年後に芸能界に復帰している。
思いつきで引退したわけではない。相当悩んだ果てに覚悟を決めて引退をしたはずだ。
それでも復帰した。
そう思うとSMAPの解散だって…。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2016年12月3日
読了日 : 2016年12月3日
本棚登録日 : 2016年12月3日

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