虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

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本棚登録 : 810
レビュー : 162
著者 :
2111okustanさん 小説   読み終わった 

あまりにも衝撃的なラストだった。

母を殺したという罪悪感にさいなまれながら軍人としての職を全うしてきた主人公クラヴィス・シェパード。
虐殺の文法なるものを発見した言語学者ジョン・ポールやその愛人ルツィア・シュクロウプとの出会いによって、自分の罪を自覚し、ついには英語の中に虐殺器官を目覚めさせる決断をした。

多くの社会問題の根源となる、人間の心理というものへの視線を感じた。
自分が見たいものだけを見る人間(人工筋肉はイルカや鯨から作られる)、良心や暴力の所在(良心も暴力も、進化の過程で適応したために存在している)、意識/無意識の境界の曖昧さ(クラヴィスの母は脳の様々な部分が壊れていた)、刺激の受容と知覚の違い(痛覚マスキングにより、痛みが「わかって」もそれを「感じる」ことはできない)などなど。

物語の要となる言語への視点も非常に興味深い。
クラヴィスは言語の見方が独特(その設定は序盤だけに見られ、最後まで活かきれていなかった感はあるが)だし、ジョンも言語への造詣が深く、ルツィアもバーにいたルーシャスも見識がある。
言語による一対多のコミュニケーション、言語と思考の「卵が先か、鶏が先か」じみた関係、(フィクションだろうが)言語の中に眠る虐殺の文法……。
読んでいると言語学をやってみたくなる。

また、オーウェルの『動物農場』『一九八四年』への言及があった。
読んでおいてよかった~~。
他にもカフカなど、いろいろなところから引用があって、よくわからない人名、作品名があったので、その辺もわかってから読んだらもっと面白かったかも。

計劃が自身の思想を語るために物語を作ったような節が見えるので、かなり説明口調で話が進む。
苦手な人は苦手だろうが、その内容が非常に人間心理やら社会やらを見直す?ヒントになるので、私もそういうのは苦手なタイプだが、面白く読めた。
その割には話も面白いし。

もう一度読みたい本のひとつになった。

p.s.
外部サイトで見つけた某さんの考察が秀逸だった。そういうことね……

レビュー投稿日
2019年1月2日
読了日
2019年1月2日
本棚登録日
2019年1月2日
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