ゲームの王国 下 (ハヤカワ文庫JA)

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本棚登録 : 198
レビュー : 25
著者 :
あぱっちさん  未設定  読み終わった 

 この下巻では上巻の終わりまでに描かれていた時代から50年余りの時間が経過している。上巻では史実に基づいた部分と絡めて流れ行く時代の奔流の中で奮闘する二人の天才少年、少女の物語が時系列に沿って展開していた。打って変わって、下巻では時代的には近未来に位置しており、テクノロジーが発達しているが、政治、社会は不正がはびこるディストピア的世界観の中で進行していく。ムイタックとソリヤのゲーム対決は時を経ても続いており、次第に人生の目的自体はこの対決のためでありそれ自体が人生であったと気づく。
 下巻で登場する「ブラクション・ゲーム」は上巻でムイタックたちが考案した、楽しむこと自体がゲームの構造に組み込まれているという新たなゲームの概念の定義が形をとったものだ。最後に二人が対決するのはこのゲーム上で展開され、地味になりがちな頭脳戦がアクションシーンとして派手に描かれている。またこのゲームの構造によってプレイヤーに自然と記憶の刷り込みができるというアイデアも示唆的で興味深かった。唯一不可解な、登場人物たちの持つ突飛すぎる超常的能力の描写は、この小説を構成する文章自体がブラクション・ゲームをプレイし、ムイタックの記憶を追体験した際の脳波、P120から文書生成アルゴリズムによって出力されたものなので、記憶の細部が現在の主観によって書き換わっているというメタフィクション的要素によるものなのではないかと思った。

レビュー投稿日
2019年12月26日
読了日
2019年12月26日
本棚登録日
2019年12月9日
2
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