西の魔女が死んだ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2001年8月1日発売)
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「冬虫夏草」の江戸時代からいきなり現代に戻ってくる。

それでも共通して感じる自然と生命力、透明感は本作でも引き継がれている。

現代社会で、よく耳にするいじめ、単身赴任、女性の社会進出などを取り入れながらも、時代が変わっても引き継がれて行く生活や、知恵を織り交ぜ、普遍的な人間の様態を描写している。

主人公である加納まいは、学校の同級生から受けるストレスから、田舎に住むイギリス人のおばあちゃんのところでしばらく生活することになる。
このおばあちゃんがタイトルの「西の魔女」である。
魔女の元で、自然と接しながら、規則正しい生活していくうちに、思春期の少女は、大人として必要となる、常識、思いやり、そしななによりも生きて行くために必要な心のコントロールの方法などを教わりながら、大人になるための準備、自我を形成していく。

「人は死んだらどうなるの?」というまいの問いにおばあちゃんは、人は身体と魂が合わさってできていると説明する。「死ぬ、ということはずっと身体に縛られた魂が、身体から離れて自由になることだと、おばあちゃんは思っています。」
これはつまり、まいがここにやって来たことまさに理由ではないかと思えてならない。つまり、まいは、生きながらにして、身体と魂がバラバラになっていたのだと、言外に示している気がするのである。それ故に魔女修行により、本来のまいらしさを取り戻して欲しいと願う孫を心配する祖母の気持ちのようにも感じるし、魔女としての助言のようにも感じる。

ゲンジさんのことでわだかまりを解消することなく離れていってしまったふたり。まいのこれからの人生を思い窓ガラスに残した伝言は、おばあちゃんの魂そのものではないかと思うと、心が震えた。と同時に、感謝の気持ちが湧いてくる。それはまさにまいの気持ちであり、その気持ちが私に降りてきたような感覚に落ちいる。

まいにとっては、おばあちゃんは魔女である。でも、おばあちゃんは決して魔女ではなく(もちろん魔法使いという意味でもなく)、読んでいくうちに人生を彩りながら生き抜いた人間のように思えてくる。
人が人として、正しく生きる、豊かに生きる、思いやって生きる……そのためにどう生きればいいのかということを伝えている気が
した。そうできていない人が多い現代社会においては、そんな生き方をしている人が魔女のように見えるのではないか?

おばあちゃんと過ごしたからこそ「渡の一日」で成長したまいを確認することができたのだろう。(と、密かに成長したまいをおばあちゃんの気持ちで見てしまった。)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年5月31日
読了日 : 2021年5月31日
本棚登録日 : 2021年5月31日

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コメント 2件

しずくさんのコメント
2021/06/28

映画も劇場で鑑賞しましたよ。

kurumicookiesさんのコメント
2021/06/28

しずくさん、
こんにちは^_^ コメントありがとうございます!
映画は、しずくさんのイメージ通りでしたでしょうか?本を読まれて、映画も鑑賞されていらっしゃるなんて、しずくさんのお気に入りの作品であることがわかりますー

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