成功する子 失敗する子――何が「その後の人生」を決めるのか

  • 英治出版 (2013年12月19日発売)
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感想 : 72
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教育関係者にはぜひ読んで欲しい一冊。

教育に関わった経験のある人なら誰でも考えたことがあると思う。

「どうしたらもっと教育の効果を高められるんだろう?」
「自分が行っている教育は果たして効果があるんだろうか?」
「今、目の前にいる子どもの役に、本当に立てているんだろうか?」

そして、

「上手くいく子と行かない子の違いは何なのか?うまくいかない子にできることは何なのか?」

こうした問に本気で答えようと試みるアメリカの教育理論と最先端の実践例を紹介した本。

何年か現場で関わってくる中で、感じていたことが書かれまくっていました。

子どもが将来自分の人生を切り開いていくための核となるものはなんなのか。
それは、「やり抜く力」「自制心」「好奇心」「誠実さ」といった非認知的スキル(知識などの認知的スキルに対しての)である。

そしてこれらは持って生まれるものではなく、親と子のコミュニケーションの中から育つものである。

最新理論とは言っても、教育という分野の特性上、確たる正解のあるものではないけれど、自分の実感としては非常に納得感のある本でした。

中でも個人的には「レジリエンス」というキーワードがとても大切だと感じた。
レジリエンスとは、回復力・抵抗力などを含む弾力性。困難な状況やそれによるストレスなど負の要素を跳ね返す力。

この力を持てているかどうかは本当に大切だと思う。
これは今後教育だけでなく、大人の世界でも重要なキーワードになるんじゃないかな。
不安定な社会の中では、予測しきれないストレスにさらされることは多いので、個人としてそれに立ち向かえることが大切だし、チームマネジメントにおいてもメンバーの、チームのレジリエンスを高められるように努めることは重要になっていくと思う。

さて、この教育理論を社会全体で取り入れていくには、どうしたらいいか。
まず、幼少期の経験が絶対的に大切になってくるのは間違いないので、教育以前の家庭の支援、子育て支援のプログラムにもこうした視点を取り入れていく必要があるのかな。

そして、学校教育。この本をぜひ教育関係者に読んで欲しくなるすごい点は、取り上げられている現場が、初等教育・中等教育・高等教育と幅広くカバーしていること。
性格の強みを作る一番の環境は幼少期の親子の愛着関係にあるとしながらも、そこからもれた子もフォローすることのできる教師の可能性を提示している。
このプログラムを実行すれば絶対という万能の解決策はやっぱり、ない。たぶんこの先もない。
現場に有能な教師が必要、というのはあまりにありふれているかもしれないけれど、それでもこの本が提示する道はとても地道でとても実践的。

この本からはアメリカの教育の現場の変化、進化がものすごくダイナミックなことが伝わってきます。翻って日本はどうだろう。

自民党政権も教育には熱心です。道徳教育の大切さを
説いたりとか。この本で言う非認知的スキルとは言ってみれば「性格」のことなんだけど、単なる倫理観とは違う。倫理が大切でないのではなくて、文化的な倫理観を超えて大切な核があるということ。
そして、それを現場重視で実行していくということ。

日本はまだまだだけど、ちょうど放課後教室の拡充を政府が検討し始めているところのようだし、色々な大人が関わって実践を積み重ねていく余地が増えていくと良いなと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 【本】暮らし・健康・子育て
感想投稿日 : 2014年5月25日
読了日 : 2014年5月21日
本棚登録日 : 2014年5月22日

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