インタフェースデザインの心理学 ―ウェブやアプリに新たな視点をもたらす100の指針

  • オライリージャパン (2012年7月14日発売)
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感想 : 96
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タイトルの通りUIに関わる本ですが、単純に読み物としても面白い。

140以上の論文や研究書を元に、人の行動や思考、感情に関する様々な知見を教えてくれるのですが、ものすごく簡潔で分かりやすいのが本書の最大の特徴にして、素晴らしい点。なんてありがたい本なんだろう。

全10章、100個のトピックに分かれているんですが、
一つ一つのトピックは1ページから長くても5ページほどにまとめられており、
興味深い事実を次々とテンポよく読んでいくことができます。

この本のレビューで、デザインに関わらない人も読んだ方が良い、というものをいくつか見たのですが、それも納得。
人と関わる社会生活一般に活かすことの出来る部分も多いと思いますが、特に組織運営に関わる人は読んで損はないと思います。

章立てを読んでピンと来る人は、是非読んでみるべき本です。

1章:人はどう見るのか
2章:人はどう読むのか
3章:人はどう記憶するのか
4章:人はどう考えるのか
5章:人はどう注目するのか
6章:人はどうすればヤル気になるのか
7章:人は社会的な動物である
8章:人はどう感じるのか
9章:間違えない人はいない
10章:人はどう決断するのか

以下、初めて知った点や目からウロコが落ちた点のメモ。

・ジオン理論。人はモノを認識するのに基本的な立体(パターン)の組み合わせを使う。シンプルなアイコンが見分けやすいのは含まれるジオンが見分けやすいから。3次元になるとより複雑になり見分けにくい。
・人は概念モデルとやりとりをする。メンタルモデルと概念モデルの不一致が起こるとシステムは使い勝手の悪いものとなる。
・創造性には4つのタイプがある。
 「熟考的で認知的な創造性」…継続的な活動とある程度の知識が必要
 「熟考的で感情的な創造性」…熟考は必要だが、知識やスキルとは関係なく感覚や感情とつながりのあるアハ体験がきっかけとなる
 「自然発生的で認知的な創造性」…前提となる経験や知識が必要だが、熟考により得られるものではない。気分転換や一晩寝かせる、など一時的に意識の働きを停止させることで、無意識が問題に取り組むことで発揮される
 「自然発生的で感情的な創造性」…知識は必要ないがスキルが必要な場合が多い。音楽、美術、著述など。
・目標に近づくほどヤル気が出る。人が注目するのは達成までの項目で何が終わったのかよりも何が残っているか。また、前進は例えそれが幻想(実質的には進んでいない)だとしても効果がある。
・オペラント条件付けが機能するためには、報酬(強化刺激)として、対象とする人が欲しがるものを選択肢なければならない。ユーザが欲しがるものや行動パターンを見きわめ、そのパターンに合わせないと効果はない。
・内的報酬は強い。外的報酬の場合、予期しないものであるほうがヤル気を起こさせる。
・進歩や熟達がヤル気につながる。顧客の定着やリピートを狙うなら、単に報酬が与えられる仕組みではなく、友だちとつながる・新しいことを修得するなど人が本能的にやりたいと思うことをさせる仕組みを用意する。
・人の行動は「性格だ」と判断されがちである。道端で困っている人を素通りした男性を見かけた場合、多くの人はその男性を「自己中心的」と捉え、急がねばならなかったかもしれないという状況的側面を軽視する。一方で自分の行動を説明する際には、状況を理由にし、自らの性格が現任ではないと説明をしがち。ただし、こうした捉え方は所属する文化により程度の差がある。
・エラーはすべてが悪いとは限らない。エラーが生じることによって、マイナスの影響が生じる可能性はあるが、必ずしもそうではない。エラーの種類によってはプラスの結果が生じるエラーもあり、プラスもマイナスもないものもある。例えば、タブレットを操作し音量調節をするつもりで画面が調整された場合、エラーではあるが、その後に画面調整をする必要があった場合いはプラスの結果であると言える。ユーザテストの場合には、発生するエラーを記録し、エラーの影響を書き留めておく。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 【本】アート・デザイン
感想投稿日 : 2014年4月17日
読了日 : 2014年4月17日
本棚登録日 : 2014年4月17日

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