海馬を求めて潜水を――作家と神経心理学者姉妹の記憶をめぐる冒険

  • みすず書房 (2021年6月23日発売)
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感想 : 9
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記憶と脳の働きについて書かれた本。神経心理学者と作家の姉妹の共著ということで、海馬をタツノオトシゴに、記憶を真珠に例えて、読みやすくうつくしく様々なエピソードを紹介している。今まで読んだ「情動はこうしてつくられる」「私はすでに死んでいる」などに比べると専門性はそんなに高くなくて、実験や研究の軽い紹介にとどまるものが多く、目新しい話はあまりなかったけど、わくわくする語り口と分かりやすさで読んでいて楽しい。
記憶は何度も何度も再構成して解釈され、全く同じ形を保つことはできない。忘却し、変容する。そうでなくては大事な記憶を守ることができないとは、何たる悲しい性。

一つ「どうもあれ以降めっきり記憶力と集中力が落ちた気がする」と思っていたことが、この本ではっきり解説されていたのですっきりした。やっぱりそうだったのか!一度そうなった場合、通常の人と同じように記憶するには繰り返して時間と手間をかける必要があるとあって、ちょっとがっかりするけれど、まあやる気を出して頑張っていくしかない。当然だけど気分と好奇心を盛り上げていかなくては記憶もやる気を出してくれないみたいだし…。
トラウマ体験の定着予防にテトリスが有効というのも納得感がある。昔本当にしんどかった頃に狂ったようにスパイダソリティアやってたのを思い出した、脳が無意識に求めていたのかもしれない。テトリスが脳の(言語ではなく)視覚的領域だけをトラウマと取り合うことで、強烈な記憶が意味を得ずに暴れまわるのを抑えることができるってすごいな。トラウマを肥大化させず理解という支配にどう取り込むのかということなんだろうか。感情も記憶も、本当に脳って解釈、解釈、解釈の繰り返しだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 人文
感想投稿日 : 2021年7月8日
読了日 : 2021年7月8日
本棚登録日 : 2021年7月8日

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