すべての雑貨

著者 :
  • 夏葉社 (2017年5月1日発売)
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本棚登録 : 177
感想 : 7
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面白かった。西荻窪の雑貨屋さん店主のエッセイ。雑貨ってなんなんだろうという話から、雑貨の歴史、音楽の話、星の王子さまとムーミンの話、父の話、レゴの話、とりとめもなく語られていく。
明らかにこの人の世界観は大部分雑貨に支配されているのに、自分は雑貨が好きなのか分からない、と言う通り語り口はどこか妙に距離を取っているような感じがする。雑貨の無機質が移ったような。

「物と物のあいだに、一秒まえと一秒後のあいだに、ちがいさえあれば価値がうまれ、雑貨はどこまでも増えていく。ほんとうは、それは進化でも退化でもないはずなのに、私たちは、ちがいをたえまなく消費することで、どこかへ前進しているような夢をみている。」
私は雑貨がかなり好きで、いつか家の中のもの全部を自分の好きなかたちと色と柄のものにして暮らすのが夢だ。この本で言う「雑貨感覚」が進んでしまった末期患者みたいなものだと思う。でも雑貨屋を回って次々雑貨を流し見て消費していくことに少し疲れつつあり、最近は鉱物とか古物を好んで見ている。三品さんが骨董市とか博物館等に入り浸るようになって「物欲がうずまく現場をうろつきながら、雑貨感覚とさまざまな古い感覚がせめぎあうのを見ると、なぜか心がおちついた」というのを読んで、ああ、と腑に落ちる感じがした。「雑貨界の限界集落」。半分雑貨になりかけて抵抗しているものたち!
こういう言葉のセンスが面白くて、最初に出てくる養老天命反転地のくだりとかも笑ってしまった。

西荻窪は上京して長いこと住んでいた町で、本当に今でも大大大好きな町だしこのお店ももちろん行ったことがあって(素敵なお店)、たまに出てくる他のお店もあそこかな、と大体わかる。この本は西荻っぽい語り、というか、平日の真昼間からこういうふわふわした感じが許されるような独特の雰囲気で、なにをしてるかよく分からない人が歩いている町の空気をふんだんに含んでいる感じで読んでいて懐かしくしんみりした。西荻に行きたくなる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ
感想投稿日 : 2020年2月17日
読了日 : 2020年2月17日
本棚登録日 : 2020年2月17日

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