父親と有名女優が起こしたある事故によって、妻子が騒動に巻き込まれて逃亡、その行く先々で出会う人々の優しさに触れながら、親子ともども成長していく物語。
著者の作品は3作目。
自身のブクログの記録によれば、今から8ヶ月14日前、前読の「鍵のない夢を見る」でレビューに綴った通り、私的に全く感情に響かなかった。それ以降、正直著者から遠ざかっていた。避けてきたのだ。
そんなある日、書店で平置きされている本作を発見。
完全に表題名と装丁に惹かれ手に取るに至った。
逃げる。佇んではまた逃げる。逃げる。
繰り返す逃避行の先で描かれる人との触れ合いは、方言も相まってとてもリアルで繊細で微笑ましく、ひとの温かさが伝わってきて心地が良かった。
特に息子の各独白章は、読み進めるごとにどんどん逞しくなっていき、息子の父親である私としてはエールとともに感情移入した。
しかしながら、そもそも母子が逃げなければならない根本的理由が腹落ちせず、肝心の父親の不甲斐なさが美談化されている設定は、とても残念に感じてしまった。
ただ、今回の作品で「ツナグ」を読んだときに感じた、ひとの心理描写の巧みさには再度好感が持てた。
他の作品も読んでみようかなと。
何より、旅がしたくなった。
四万十川でテナガエビが食べたい。
別府で砂湯に入りたい。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2021年9月5日
- 読了日 : 2021年9月5日
- 本棚登録日 : 2021年8月14日
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