「向田邦子」の『愛という字』を読みました。
東芝日曜劇場向けの放送台本を「中野玲子」が小説化した作品です。
先日読了した『蛇蝎(だかつ)のごとく』に続き、「向田邦子」作品ですね。
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意外なきっかけで知り合った男は画家だった。
繊細な指、しゃれた服装、そして胃を病んでいる。
丈夫で平凡なサラリーマンの夫とは何から何まで違っていた。
魅力的な男の出現に揺れる微妙な女心を描いた表題作の『愛という字』他、温かくてちょっとホロ苦い向田ドラマの秀作『びっくり箱』『母上様・赤沢良雄』を収録。
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本作品には以下の三篇の短篇が収録されています。
■びっくり箱
■母上様・赤沢良雄
■愛という字
■びっくり箱
東京で働いていた「厚子」は恋人を連れて実家へ帰郷。
女手ひとつで内職をしながら苦労して「厚子」を育ててくれた母親の家では母と見知らぬ男がいて、「厚子」は母親と喧嘩になってしまう。
人生って、驚きの連続… 人生はびっくり箱、楽しいことが出てくるか、 悲しいことが出てくるか、あけてみなけりゃ分からない。
くびくしながら、ワクワクしながら… 人生は、日々、びっくり箱を開けながら、過ごしているのかもしれませんね。
■母上様・赤沢良雄
特攻隊の所属していた息子が書いた遺書。
生き残った息子にとっては、バツの悪い遺書になってしまったけど、母親にとっては大切な宝物… 息子の立場、亭主の立場から、母子の関係と家族の繋がりを考え直すことのできた作品でした。
■愛という字
三篇の中で最も印象に残った作品。
要約すると、平凡な生活に飽きた主婦が、愛に憧れて、それを実現しようとするけど… 現実に気付き、平凡だけど幸せな家庭に戻る、、、
という作品なんですが、「向田邦子」が脚本を書くと平凡なドラマな感じがしないんですよね。
画家とその彼に心揺れる女心の微妙な人間描写が巧く描かれているからなんでしょうねぇ。
道具の使い方も巧くて… 出会いのきっかけとなる腕時計なんか、そのイイ例だと思います。
それから心の機微を表す比喩的な表現が巧い、こういうところは大好きですね。
心がときめくときの「胸の中で、小さく目覚まし時計がなる」とか、
画家から色んなこと(愛情を含めて)を教えてもらったことを「お陰で、いろんな色の名前、覚えたわ」とか、
一線を越えようとしたときに「目覚まし時計の音を怖がって鳴る前に止めてしまったのは、昨日までの直子だった」とか、
巧い表現だと思いますね。
「向田邦子」らしい作品だなぁ… と感じた作品でした。
「向田邦子」作品を読み始めると、また次の作品が読みたくなりますね。
- 感想投稿日 : 2022年4月20日
- 読了日 : 2011年2月2日
- 本棚登録日 : 2022年3月11日
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