バカの壁 (新潮新書)

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レビュー : 1075
著者 :
ぶーちんさん  未設定  読み終わった 

#読了 2019.4.27

先日読んだ「天地明察/冲方丁」の解説を養老孟司さんが書いていて、そういえば長年積読に混ざっていたなと引っ張り出した次第。
出てくる話は2003年当時の感覚のものが多いので、当時を知らない人には正しくニュアンスや温度感が伝わらない箇所もあるかと思う。

たとえ自分の中でそれが真実でも、相手の中での真実が別に存在することもあって、それがお互いの正義となってぶつかることがあると思う。それはそれでしゃーなしで。
ただ。相手を否定しなければ自分が肯定されないってわけじゃないから。自己肯定のために相手を攻撃するのではく、むしろ他人に対してもう少し我慢したり、許容したり、ときに無関心になってもいいんじゃないかなぁ。

2003年発売のこの本、私は当時大学二年生。確かにそういう時代だったなぁと思い返しながら読んだ。
高校入学に合わせて、周りの子達はPHSを買ってもらう時代だった。うちは厳しかったので私は大学一年生のときにバイトをして初めて自分の携帯電話を持った。そういう時代。
携帯電話が1人1台になり始め、大学でもパソコンの授業が始まり、いつでもネットに触れる環境になりつつも、それでもネットやパソコンに詳しい人はオタク扱いされ、それをオープンに自負できるような空気ではまだまだ無い頃。
辞書を引くより、ネット検索することが多くなり、メールが頻繁になり、コミュニケーションの仕方も大幅に変わっていった、そしてゆとり世代前の勉強詰め込み世代であり、且つバブルを知らない世代。自分で言うのもなんだが、上の世代から見れば、社会で戦う馬力は弱いが勉強だけは頑張る、養老孟司さんが言う通り、すぐ正解を知りたがる世代、だったかもしれない。(その後にもっと馬力の弱い世代が来るのだがそれは置いといて)

大卒が当たり前になり、特別なステータスではなくなった。大卒でもフリーターになることを世間に黙認され始めた頃、不景気と言われながらもリーマンショック前の景気あたりは契約社員や派遣社員などの非正規雇用社員を増やした頃だとも思う。

そんな時代背景もあってか、当時は確かに「個性」とか「手に職」とかよく言われていたように思う。
そこに疑問を投げかける点など、とても養老孟司さん節!という感じがした。

この本の要点は、つまり一元論は危険だと言うこと。これは当時まだ記憶に新しい95年地下鉄サリン事件、97年京都議定書、2001年アメリカ同時多発テロ事件、などの時代背景を根拠に話が進められていくが、2019年この時代においても当てはまることだなぁと思う。
2003年当時のメインSNSはmixiだったと思うが、その後Twitter、アメブロ、Facebook、Instagram、LINE、TikTokなど様々なコミュニケーションツールで情報収集すると同時に、自ら情報を発信し、まわりがそれに反応するというコミュニケーションを取るようになっていった。その多くが本名を隠してコミュニケーションが取れるわけだ。
それはこの本がバカ売れした2003年当時よりも一元論者(自覚、無自覚ともかく)が増える環境であると思う。"炎上"などは正しい反応もあるけど、おおかた一元論者ばかりが反応する現象だなぁと思ったりする。(それが商法として成り立ってしまってはなんとも言えないが。)

元々、私は多分自分の意志が他の人より強くて声も大きいタイプだと思うから、普段から一元論者にならないよう気をつけようと心がけてはいる(つもり)ので、作者の主張には基本的に共感する部分が多かった。
今後も自分の意志を持ちつつも盲目的にならずに広い視野でいろんなものや人と関わっていきたいなぁと思う。

あとは、そうだな。
養老孟司さん独特の強めの言い回しが、一元論に聞こえるような部分がある気がして。
まぁ、そこは「雪が溶けたら何になる?=春になる」と答えるような文系頭の私にはド理系の強さにあてられただけかな?(笑)

普段、小説ばかり読んでいて久々にこの手のを読んだ。頭使うね(笑)
ほら、小説って作者自ら「どういう風に受け取るかはあなた(読者)次第ですよ…うふふ」みたいな空気あるけど、この手のは「私はこう思っているのだ!それが伝わるよう最大限努力して綴った文章だ!どうだい?伝わったかい?」ってかんじじゃない?(違う?w)
正しく読み取ろう!って部分に関しては普段甘えて読書してたなぁって気付いた。
まぁ。だから小説が好きなんだろうなぁ。相手の気持ちを正しく読み取ろう!なんてパワーの使い方は、普段の人間関係(ネット含む)の中だけで充分です(笑)
自分が受け取ったままに受け取っていい小説がひとつの癒しです。
と言いつつ、この手のもたまには読んでいきたいなぁ。

◆内容(BOOK データベースより)
イタズラ小僧と父親、イスラム原理主義者と米国、若者と老人は、なぜ互いに話が通じないのか。そこに「バカの壁」が立ちはだかっているからである。いつの間にか私たちは様々な「壁」に囲まれている。それを知ることで気が楽になる。世界の見方が分かってくる。人生でぶつかる諸問題について、「共同体」「無意識」「身体」「個性」「脳」など、多様な角度から考えるためのヒントを提示する。

レビュー投稿日
2019年4月29日
読了日
2019年4月29日
本棚登録日
2019年4月29日
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