内田先生、ミシマ社からの久々の書き下ろしは、〈習合〉をキーワードに、日本社会の様々な諸相を論じたものである。
加藤周一が唱えた、日本文化は雑種文化であるというテーゼの代表的な顕現として「神仏習合」があるのではないかと捉え、それではなぜ千年近く続いたにもかかわらず、維新政府の政策によりほとんど抵抗なく神仏分離が進んだのか、との問いを発する。
それを中心的な問いとして、共同体、農業、宗教、仕事と働き方等々について、興味深い話が続く。社会的共通資本の公共性、ショートレンジで利潤最大化を目指すグローバル資本主義の限界、働くことの意義、これは自分の使命だと思って行動する人間がどのくらいいるかが、その社会の強靭性、健全性を示していること等々について、いつもの内田節で、具体事例を紹介しながら、目から鱗の面白い話題が続く。
純化主義、原理主義は純粋で、浄化、原点帰還は巨大なエネルギーを発出するが、それで本当に世の中はよくなるのだろうか、折り合いをつけて習合することで日本は創造性を発揮してきたのではないのか。
日本の閉塞状況に対する著者の考察が詰まっており、いろいろなことを考えさせられる、良き参考書である。
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- 感想投稿日 : 2020年9月19日
- 読了日 : 2020年9月19日
- 本棚登録日 : 2020年9月19日
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