音楽療法士にスポットを当てた作品。音大に通う真尋は、最初は、演奏家を目指すが、人の心と体を癒す、音楽療法に興味を持ちます。大学で学びながら、大学の先輩で、自宅で音楽セラピーをしている、三上先生の助手をします。セラピーに通ってくる患者さんは、皆、心の病にかかっています。親子関係や、仕事の悩み。三上先生のセラピーは、まず、患者さんと会話をし、今の心の状態を、楽器を使って、音で表現します。使う楽器は、ピアノ、バイオリン、今まで楽器に触れたことがない人でも、すぐに音が出せる打楽器など。そして、その演奏によって、三上先生は、患者さんの心の動きを丁寧に読み取っていきます。真尋は、患者さんの演奏に寄り添うように伴奏をします。それによって又、新たな心の状態が、引き出されるからです。
しかし、読み進めていくと、本当にこのセラピーが必要なのは、真尋なのだと気づきます。祖母と母親の板挟みで、両方に気を遣い過ぎて、いつも心身共に疲れています。かわいそうなぐらい。だから、患者さんのセラピーを手伝っていても、自分がそれに引っ張られて、感極まって泣いてしまうことが多くありました。そんな真尋に、最後に、三上先生からの厳しくも温かい言葉が、胸に刺さります。
登場人物のほとんどが、心に闇を抱えているので、終始、重く、苦しい話です。読み終わっても、心にモヤモヤ感が残りました。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2024年6月7日
- 読了日 : 2024年6月2日
- 本棚登録日 : 2024年6月7日
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