島はぼくらと

4.02
  • (474)
  • (662)
  • (338)
  • (47)
  • (4)
本棚登録 : 3825
レビュー : 594
著者 :
制作 : 五十嵐 大介 
【Wine case】さん  未設定  読み終わった 

本書の舞台は瀬戸内海に浮かぶ冴島。一昨年に開催された瀬戸内国際芸術祭の際に、足を運んだ『男木島』をイメージしながら読んだ。

主人公の4人以外にも魅力的な登場人物達が沢山登場してきて面白い。特に、朱里の母、我が子のためにIターンを決意した蕗子、コミュニティデザイナーのヨシノの三人は、それぞれが、それぞれ守らなければならない者のために、日々を懸命に生きているところに好感が持てた。その他にも、読みながらいろいろが感想が浮かんだが、大きなものは三つある。

一つ目。蕗子が、自分とはまったく立場の違う女性の新聞への投書を読む場面。著者は蕗子に、「人が乗っかるのは、栄誉だけではない。人間は、自分の物語を作るためなら、なんにでも意味を見る。・・・他人の死すら、人は自分に引きつけて、イベントごとのように消化してしまうものなのか、と足が竦んだ」(P.119)と語らせている。読んでいて、著者の、世界を見る目は本当に鋭い(ここでいう鋭さは、分析力)と思った。

二つ目。その反面、スロウハイツの時もそうだったけど、主人公と対立する立場の人(村長や霧崎ハイジ、衣花の父)を、悪く書いていない(つまり、さまざまな側面から描いている)ところに好感が持てた。だからこそ、主軸となる物語、そして舞台となっている島の力とも相まって、読後感がとても爽やかでよかった。この本の著者は、本当に良い小説を描く人だなぁと思った。

三つ目。主人公の一人である朱里の祖母が、冴島の噴火により、結果として友人と今生の別れとなる一連の物語が印象に残った。読みながら、自分がかつて高校に勤めていた頃、震災の影響で続々と転向してきた福島の高校生たちのことをふと思い出し、彼らの未来が幸福なものであってほしいと思った。

最後にもう一つ。本書は友人から借りて読んだのだけどど、同時にスロウハイツも薦めてもらったので併せて借りた。なので、何となくスロウハイツを先に読んでからの方がいいかなと思ったけど、やっぱり正解だった。読むなら、スロウハイツ→本書の順がオススメ。

レビュー投稿日
2015年3月1日
読了日
2015年3月1日
本棚登録日
2015年2月25日
4
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『島はぼくらと』のレビューをもっとみる

『島はぼくらと』のレビューへのコメント

まだコメントはありません。

コメントをする場合は、ログインしてください。

いいね!してくれた人

ツイートする