「スター誕生」と歌謡曲黄金の70年代 夢を食った男たち (文春文庫 あ 8-5)

  • 文藝春秋 (2007年12月6日発売)
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感想 : 7
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「スタ誕」誕生のいきさつからスタートしてそれぞれの歌手にまつわる思い出話を展開していく。
10年間審査員として素人からアイドルになるその瞬間を見届けてきた内部中の内部の人なので、エピソード自体はどれも面白い上に、さらにそれを阿久悠の感性と言葉選びで綴られているのでいちいちビンタされたように痺れる。

「百恵はそれと悟られぬように変装し、ピンクレディーは変装を宣言して変装した。」(百恵には一曲も提供してないけどね。三人娘の初恋時代だけ。)

「(ピンクレディーのデビューを)手を振る人のない八月の船出。」

「リンダ、フィンガーに次ぐ第三の絵空事路線」

「全く産んだ覚えのない子が里帰りしてくる」

別の本を読んでいて阿久悠の「故郷」へのこだわりが希薄なこと、仕事仲間への敬意はあっても馴れ合いや思い込みがないこと、自身の願望である強い女性と女性の地位向上を徹底して書き出していること、冷静な目で書く歌詞に人は酔うのだなと思ってたけどここでも振付師土井氏との交流を「通勤電車ではそうはならないけど長距離なら。番組が長く続いたから。」とあっさりと書いてる。運命の仕事仲間、ではなく、たまたま長く乗り合わせた乗客になぞらえるドライさが彼が書く歌詞の輪郭のクリアさの秘訣なのかなとか思ったり。

都倉俊一、小林亜星とのエピソードもイキイキしててイイ。現体制をパロってたら桑田にやられて自分が現体制だと気付かされたってのもイイ。

スタ誕の話がひと段落して、ビートルズについて語る章は彼らがたった5日の滞在で日本の音楽の、文化の、何をどう壊して去っていったを分かりやすく書いてくれている。「新しくはあるが奇異ではなく美しかった」「若者を昂らせ大人を落ち着かせる」なるほど。

それにしても。黒木真由美と清水由紀子がプロ達垂涎の有望株だったと聞いたことはあったけどそれ程とは。(札が沢山上がったけどでも。。ってのは渋谷哲平とかもそうでしたよね)実力があっても売れない世界なのか、それともプロの審美眼打率はそれほど高くないのか、本人の魅力の波が活動時期とズレたのか、単に時代が変わったのか。
彼が書くようにただ時期の問題なのか。
理由なんて後から他人がいくらでもつけてくれるものですね。何事も。

最後に。
変わり者ばかりの芸能界。昭和の時代に平安貴族のような「方違え」を実行する中村泰二がキモくていい。(明菜ちゃんに99点くれたから許す)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年10月13日
読了日 : 2023年10月9日
本棚登録日 : 2023年9月27日

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