令和元年のテロリズム (新潮文庫)

  • 新潮社 (2024年4月24日発売)
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感想 : 10
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磯部涼『令和元年のテロリズム』新潮文庫。

タイトルとは裏腹にテロリズム事件など一つも扱われていない。また、取り上げている5つの事件は、週刊誌が取り上げるような内容ばかりが描かれ、読者に何かを訴えるような内容にはなってない。

最初に20人もの被害者を出した『川崎殺傷事件』を取り上げているが、著者の作品である『ルポ 川崎』を焼き直したような、自著を宣伝するかのような内容であった。犯人が現場で自死しているため、その動機は謎のままである。

『元農水事務次官長男殺害事件』は『川崎殺傷事件』を受けて、元農水省の事務次官が息子も同じような事件を起こすのではという危惧から息子を殺害した事件である。著者は息子のSNSばかりに言及し、事件そのものについては深堀りしていないように思う。

『京アニ放火殺傷事件』。一見、テロリズムのような痛ましい凶悪事件ではあるが、犯人の動機は誤った私怨に過ぎない。

平成31年に起きた『東池袋自動車暴走死傷事故』は、もはや令和元年に起きた事件でもなければ、テロリズムでもない。

文庫版の追章として『安倍元首相殺害事件』を取り上げ、やっとテロリズム事件が扱われたかのように思えたのだが、動機は犯人の私怨であると言った方が正解であろう。しかし、この事件により自民党がカルト宗教団体と密接なつながりを持っていたことを明らかにしたことは事実である。

本体価格630円
★★★

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本
感想投稿日 : 2024年5月6日
読了日 : 2024年5月6日
本棚登録日 : 2024年5月5日

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