西式豊『鬼神の檻』ハヤカワ文庫。
行き付けの本屋に目立つポップと共に平積みされ、内容の紹介文とおどろおどろしい表紙の鬼のイラストが気になり、購入。
初読み作家。初読み作家の場合、最初の数行のを読むと第一印象が決まる。西式豊の文章はなかなかやるではないかという印象。何よりも風景描写が良い。冬の秋田の里の風景を『冬は、風景から色を奪う。』という一文で的確に描いてみせた。
大正12年、昭和48年、令和5年という3つの年代を背景にした伝奇ホラー推理SF小説。
こうまで小説の内容が次々と変化していく小説は珍しいが、それに付いて行くのには、かなりの煩わしさがある。
大正12年が舞台の第一部は伝奇ホラー小説の色合いが濃く、第二部の昭和48年が舞台になると、4つの旧家の因縁が渦巻く、横溝正史のミステリー小説のような展開を見せる。最後の第三部で令和5年が舞台になると、新人女性記者を主人公にした正統派の推理小説と思わせながら、SF小説へと変貌して行くのだ。しかし、そのSFがやけに安っぽいことが全てを台無しにしている。
大正12年、50年に一度の嫁取りと引き換えに村を護る貴神様を信仰する秋田県御荷守村で、その年の貴神様の嫁となる『御台』に選ばれた北白真棹は貴神様が超人的な力を持つ残虐で邪悪な存在であることを知る。真棹を見初めた将校の鷹籐と部下の志賀に寸でのところで救出された真棹だったが、24人もの村人らが貴神様により惨殺される。
それから50年後の昭和48年、御荷守の東峰家と縁のある星河瑞希は、東峰勝蔵に呼び戻され、『御台』候補として他の3人の娘と共に『御見立の儀』に参加する。しかし、『御見立の儀』を発端に数え歌になぞらえたような凄惨な連続殺人が巻き起こる。
さらに50年後の令和5年、秋田県で昭和48年の事件と類似した凄惨な殺人事件が起きる。新人記者の幸弘蒼はこの事件に興味を持ち、取材を進めると昭和48年の事件で殺害された星河瑞希が自分と酷似した相貌であることを知る。
本体価格1,220円
★★★
- 感想投稿日 : 2024年9月24日
- 読了日 : 2024年9月24日
- 本棚登録日 : 2024年9月22日
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