西村健『バスを待つ男』実業之日本社文庫。
トラベルミステリーと安楽椅子探偵の融合という珍しい仕掛の連作短編である。主人公は70歳の元刑事とその妻で、最後まで2人の名前は明かされない。様々なミステリーが描かれるが謎解きは明解で、この殺伐とした時代に思わずほっこりする短編ばかりが並び、非常に面白い。是非とも読むべき作品である。
定年を迎え、特に趣味も無く日常を過ごしていた70歳になる元刑事が見付けたのはシルバーパスを利用しての都バスの小さな旅。旅先で出会う様々な日常のミステリー。しかし、謎を解くのは、いつも元刑事の妻というのだから面白い。
『第一章 バスを待つ男』。元刑事が不審に感じたバス停に佇む男性の目的は……
『第二章 母子の狐』。王子の稲荷に佇むお狐様に掛けられた白い前掛けの謎……
『第三章 うそと裏切り』。元刑事が出会った家電量販店を徘徊する中学生が抱える悩みとは……
『第四章 迷宮霊園』。元刑事がバスの中で偶然出会った、かつての同僚。かつての同僚の言葉のままに多摩霊園の目当ての墓を探すが……
『第五章 居残りサベージ』。品川に居残り、ひたすらみたらし団子を食べ歩く、アメリカの大学生クリス・サベージの謎……
『第六章 鬼のいる街』。既に解決した連続殺人鬼事件。犯人は何故、目撃者の女性に手を掛けず、踵を返したのか……
『第七章 花違い』。女子高生の家に毎朝届けられる1輪の花の謎は……
『第八章 長い旅』。元刑事が現役の頃、迷宮入りした三鷹駅近くで起きた殺人事件……
『終章』。最後に泣いた。泣かされた。
本体価格700円
★★★★★
- 感想投稿日 : 2020年4月23日
- 読了日 : 2020年4月23日
- 本棚登録日 : 2020年4月21日
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