冨士本由紀『ひとさらいの夏』双葉文庫。
さわや書店の文庫Xの仕掛人の復刊熱望作品ということで、重版を機に購入。
7編から成る短編集。いずれも女性を主人公にしており、何とも言えない嫌な後味を残す救いの無いサスペンスフルな短編ばかりである。イヤミスのような、ある種の寓話のような短編集であるが、もろ手を挙げて絶賛出来るという作品ではない。
『氷砂糖』。主婦の日常を舞台にした小さなサスペンスといったところだろうか。偶然再会した昔の男は自分を忘れてしまったのか。日常生活という呪縛から逃れようとするかのような主婦の迷走…
『ひとさらいの夏』。恋人に裏切られ、2,000万円もの借金を抱えることになった41歳の女。偶然出会った15歳の少年の純粋な心に触れるうちに…
『田螺と水面の月』。パチンコにハマる野越弓子は樽元武司と出会い、恋に陥る。束の間の恋の行方は…不幸な女たちに救いと夢を与え続ける樽元…
『僻む女』。人の幸せを妬むオンナが味わう恐怖は…同級生で女医となった瑞穂に有らぬ疑いをかけたことから、とんでもない事態に陥る多可子。
『亜種幻想』。何とも言えない閉塞感と絶望感…その呪縛から解放される時。上司の鞘木と不倫関係にある曜子は同僚の水島が鞘木に執拗な虐めを受けるのを見ているうちに…
『蜘蛛』。脳梗塞の後遺症で寝た切りになった母親を介護する杏子。自らの自由も、幸せをも掴み取れぬままに無為な日々を送る杏子…
『コンドル』。失職し、なかなか再就職を果たさないダメ夫と暮らす枝里はマクシミリアム・リーブスというアメリカ人と知り合うが…
- 感想投稿日 : 2017年4月2日
- 読了日 : 2017年4月2日
- 本棚登録日 : 2017年4月1日
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