孤独な夜のココア (新潮文庫)

  • 新潮社 (1983年3月29日発売)
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感想 : 281
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 読んだことないので、おじさんが20代女性視点の恋愛小説ってどうかなと思いましたが、読んだらすごく面白く、とてもよかったです。おじさんにも、おすすめします。
 解説の綿矢りささんも書かれていますが、主人公の女性たち、優しいし、どことなくサバサバした感じがして、どんな状況でも前向きです。その姿に癒されたり、励まされたりしました。
 田辺聖子さんの女性の心情表現については、よく分かりませんでしたが、読み始めると少し粘っこい文章だなと思いました。それもすぐに慣れ、スイスイ読めます。

 時代は昭和です。TVドラマの『不適切・・・』の昭和時代よりももうちょっと昔です。そのため、本の最後に編集部から「・・・今日の観点からみると差別的ととられかねない表現が散見・・・原文どおりとしました。」みたいな説明がつけられたりして。
 昭和を知らない世代には、女性を取り巻く社会情勢に違和感を感じるかもしれません。
 それでも私は、昭和感は薄いと思いました。それは、田辺聖子さんの表現が、「遠くから見て楽しんだ」とか「匂いをかいだ」みたいな主人公の行動や、その時の気持ちなんかが中心だからかな、と思いました。まあ、自分も昭和ですしね。

 この本は、原田ひ香さんの『図書館のお夜食』で田辺聖子さんのレシピが紹介されたり、覆面作家さんのお宅に全集があったりしたことから選びました。
 覆面作家さんの洗面所で『田辺聖子全集』が見つかったことに、とても違和感を感じていましたが、もしかしたら覆面作家さんは、お風呂なんかで田辺聖子さんの作品を読みながら孤独を癒し、生きる勇気をもらっていたのかもしれませんね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年3月18日
読了日 : 2024年3月17日
本棚登録日 : 2024年3月10日

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